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地方・農業・環境・福祉

2016年8月 2日 (火)

総務省行政評価・監視報告「中心市街地活性化計画、目標達成ゼロ」より

総務省は2016729日、地域活性化三計画(地域再生計画、都市再生整備計画、中心市街地活性化基本計画)の抽出291計画についてその効果に関する調査を発表した。都市再生法に基づく都市再生整備計画(62計画)、地域再生法に基づく地域再生計画(162計画)は目標達成率がそれぞれ4割弱だったが、中心市街地活性化法に基づく44の基本計画は、市が定めた活性化に関する目標を達成できた計画はゼロだった。

地域活性化3計画を作成した自治体は、国の支援施策も活用しつつ、地域独自の事業も実施して計画を推進している。実施された事業6,173事業のうち、国の支援施策を活用:4,569事業(74%)、地域独自の事業:1,604事業(26%)と地域独自の工夫を行っている。地域は精一杯努力している。それでも、成果が伴っていないということに大きな問題がある。

総務省の調査報告は、次のような問題点を指摘している。

(1)指標の設定が不適切な例、指標の測定が不適切な例がある
◆指標の設定や測定が不適切なもの(291計画1,001指標のうち49計画102指標)
 「団塊の世代の退職後の活用による地域活性化」という目標は定めているが、指標が設定されておらず事後評価が実施されていない   
 計画期間最終年度に当初設定した目標値を下方修正し、下方修正した目標値を上回ったことから目標達成と評価   
 指標の測定箇所が事業の実施箇所から離れており、事業との整合性が確保されていない

◆歩行者通行量(97計画105指標)、販売額(21計画21指標)等測定方法が区々など、国による事後評価の支援が必要な状況あり
(例)所要の予算が確保できないなどにより、歩行者通行量の測定を年に1回のみ実施(65計画69指標)。中には、目標未達成の原因を測定日の悪天候のためとしており、要因分析ができていないものもあり 

◆国は、自治体が行う事後評価結果を活用して政策効果を把握しており、その情報が的確であることは重要。国は、事後評価の支援(マニュアル整備、個別の助 言等)に取り組んでいるものの、このような状況を踏まえると不十分

(2)地域住民等との連携等の重要な取組の推進
◆地域住民等との連携等の重要な取組に関する情報提供が不十分地域住民等との連携や中間評価に適切に取り組み、効果発現がみられる計画がある一方、取組が不十分で効果がみられない計画あり
(例)観光地へのアクセス道路を整備したが、過剰な車両流入を懸念した地域住民等の声を受け道路の供用が延期され、観光客数等の目標を達成していない

 ◆国が作成した事例集等にはこれらの取組に着目した事例が必ずしも紹介され いない。また、各府省で別個に情報提供され総覧性に乏しい

(3)計画期間中に発現した効果を持続させていく取組の推進
計画期間中に発現した効果が持続しているか検証するため、継続的な 効果測定に取り組んでいる例がある一方、取り組まれていない例あり

◆取り組まれていない主な理由は、目標値を上回る結果が得られたため必要性を感じなかった、国のマニュアル等で実施や報告が求められていないなど

◆計画期間終了後も継続的に効果測定をし、一時的に利用者数の減少がみられた商業 施設について、効果測定の結果を踏まえて対策を講じ、利用者数が増加している例あり 

(4)地域再生計画における申請手続の簡素合理化
地域再生計画と地域雇用創造計画は一体的に作成・運用するメリットあり

◆地域雇用創造事業を実施するために、市町村は記載内容の類似する地域再生計画と地域雇用創造計画をそれぞれ作成し、内閣府の認定・厚労省の同意を得る必要あり

◆計画を作成した地方都市からは、内容が同じで重複感があるとして、書類削減等事務 の効率化を求める意見あり地域雇用創造計画で目標値を変更しているのにもかかわらず、地域再生計画で目標 値を変更していない例など一体的に作成・運用した方がマネジメントが適切に行われる例あり

総務省は、調査結果をもとに改善策の検討を関係省庁に勧告した。中心市街地活性化に基づく計画は、2つの計画に比べて目標達成率が著しく低いため、原因分析や改善策の検討を内閣府や国土交通省などに求めた。http://www.soumu.go.jp/main_content/000431827.pdf

 

何処に問題があるのか。中心市街地活性化法は1998年に成立。06年の改正で自治体が作成した計画を首相が認定する制度になった。歩行者の通行量や空き店舗率など、独自に複数の目標を計画に盛り込み、認定されれば交付金や税の特例などで国の支援が受けられるという仕組みである。このような仕組みは、明治以来中央政府が地方を管轄する手法として確立させてきたものである。国が統一的な価値観(省庁ごとの管轄権と補助金、計画内容と評価基準)のもとにコントロールしてきたものである。

この方法は、全国を一定方向に導いてきたものではあるが、同質的な町にして地域の活力を奪った面が大きい。中央主導の地域再生は、地域の中で計画を生きたものとして機能させていない最も大きな原因ではないか。地域の計画を中央省庁の縄張りによって地域の内部を分断して成功するはずはない。計画は地域独自のものであり、それぞれの分野が有機的に結びついているものである。そして、そこには地域で生活している住民がいて住民と一体となってはじめて息づくものである。

計画は地域主導によって地域の独自性にゆだね、地域の知恵に突破口を見いだすことが先決であろう。地域が今後どんな未来を築けるかは、地域に住む人々の努力にかかっているのであって、計画指標の達成いかんが計画の達成と勘違いされてはかなわない。数値が先行すると、話は途端に堅苦しく面白くなくなる。計画は、人々に地域の希望ある未来を示し、人々を勇気づけることに本当の目的がある。地域の全員が参加したいと感じる計画が素晴らしい計画である。そして、そのような計画が立案できたなら、計画は半分達成されたといえよう。

もっとも、現代は時代の大きな転換期にあるため、ただ地域に委ねれば成功するというものでもない。時代の動きを見極める眼力が欠かせない。そして、絶えず未来を見続けて未来を模索することが大切であろう。

青森市は07年、青森駅周辺の中心市街地の再生に関する計画が認定された。歩行者通行量を3割増の7万6000人とするなど4目標をたてたが、計画が終了した11年の通行量は4万人程度にとどまった。富山市は市内の路面電車の1日平均乗車人数を1万3000人にする目標を掲げたが、結果は約1万1000人で未達に終わった。青森駅前の中心市街地活性化のモデルとしてかつて全国の注目を集めた商業施設「アウガ」(2001年開業)は、2015年度決算で大幅な債務超過に陥り経営破たんした。コンパクトシティは、なかなか進展していない。

2016年1月10日 (日)

インフラファンドが開く日本の未来

2015年4月に東京証券取引所が開設した「インフラファンド市場」に、上場第1号が今年春にも実現する見通しである。マンション分譲を手掛けるタカラレーベンが運営する太陽光発電ファンドの上場を申請した。新市場の利用が広がれば、再生エネルギー事業などの資金調達のパイプが太くなり、投資家の資金運用の多様化にも一役買うことになりそうだ。
インフラファンドは、不動産投資ファンドに似た仕組みで、再生可能エネルギーの設備などを運用対象に組み入れた投資法人を設立する。投資家は、事業から得られた利益から分配金を受け取る。日々取引されるため流動性が高く、換金も容易にできる。(日本経済新聞2016/1/8)
年明け早々、インフラファンドが具体的に動き出すというニュースが伝えられた。この制度は、新しい時代を告げるものになる可能性がある。
 
既に世界では、2013年1月30日時点で上場インフラファンドは世界で約50銘柄、時価総額は10.4兆円あるという。最も時価総額が大きいのはオーストラリア証券取引所で、同時点で3兆7,051億円と、世界の時価総額のうち35.6%を占めている。
次に時価総額が大きいのはカナダのトロント証券取引所で、時価総額2兆5,082億円、アジアで最も大きいのはシンガポール証券取引所で1兆3,054億円だ。他にもロンドン証券取引所、ニューヨーク証券取引所、タイ、韓国にもインフラファンドが上場している。(ZUU online参照)
 
世界の潮流の中で日本は出遅れていたのである。下の図は、インフラファンドの仕組みを説明したものである。(出典:日本取引所グループより)
 
Photo
 

インフラファンドの仕組みをクートンブログさんのブログより簡単に説明しておこう。http://blog.qooton.co.jp/entry/2015/06/23/113100

A社は多くの太陽光発電所を作り、保有しています。しかし、これをずっと保有しているだけでは成長が足踏みしてしまいます。

そこで、完成した太陽光発電所を太陽光ファンドに売却して、そこで得たお金を使って新しい太陽光発電所を作ることで、成長を加速させることにしました。

上記図の「インフラの提供」を行うのは、A社です。A社が売却した太陽光発電所を、インフラファンドが買い取って保有します。

そのインフラファンドを設立するのは、A社自身(または関連子会社)です。A社自身がインフラファンドに一部を出資し、そして残りの資金を私たち投資家から集めるケースが多いです。

しかし、ルールとして、インフラファンド自体は具体的な経営ができません。そこで、「資産運用会社」を別途設立します。

インフラファンドは自分で動けないので、実際に指図をしてファンドを動かすのは、「資産運用会社」です。資産運用会社が太陽光発電所の買取や売却の決定など、ファンドの舵取りを行います。ちなみに、資産運用会社も東京電力の関連会社が行うケースがほとんどです。

インフラファンドが保有している太陽光発電所は、その施設を必要としている人に貸し出されます。

その施設を必要としている人もまた、A社です。A社(の関連会社)が「オペレーター」となり、インフラファンドから借りた太陽光発電所を使って、実際の運営を行います。

太陽光発電所のレンタル料を、毎月賃料としてインフラファンドに支払い、インフラファンドはそのお金を投資家に分配します。

不動産投資ファンド(REIT)とほぼ同じ仕組みである。この仕組みは、日本の今後の成長にとって非常に期待されている。現在期待されている社会インフラファンド分野は、「スマート・コミュニティ」「東日本大震災からの復興」「防災・減災」「新エネルギー」「ベース電源再興」「トンネル・地下構造物」「次世代鉄道システム」「トンネル・橋梁メンテナンス」「都心部再開発」「次世代自動車・システム」「観光立国」「次世代情報システム」「高齢者支援」「バイオテクノロジー」「ロボットテクノロジー」などが考えられるという。不特定多数の投資家の資金をインフラ整備に活用できるというメリットに注目が集まっているようである。

しかし問題は、投資に対する見返りとしての収益がどれくらい上がるかという点にある。今回、上場第1号が実現する見通しになったのは、税制面での後押しがあったからだという。インフラ上場投資ファンドは、利益に対する法人税の非課税期間が現行の10年から20年に延ばされたため、投資家は分配金を受け取りやすくなったのである。

このように、投資として魅力があるかどうかが今後普及するか否かのポイントである。しかし、この見方はインフラファンドを矮小化して見ている可能性がある。インフラファンドを一つのインフラの収益性としてだけ見つめているからである。

インフラファンドは、スマート・コミュニティのようにそれ自体の運用次第で大きな投資効果を持つ可能性があることに気づいていないのではなかろうか。私は、インフラファンドを地域創生ファンドとして日本の未来を切り開く切り札として提唱したい。

 

2015年11月26日 (木)

人材派遣業界の革命児「リツアン」―業界の悪しき常識の破壊者

派遣労働者の待遇は、賃金の低さだけでなく、雇い止めや派遣切りなど雇用の安定に乏しいものとして、従来から問題にされています。派遣労働者は、派遣先の企業のコストダウン対策として一時的な労働者として活用されていることが元凶です。このため世間のほとんどの人は、派遣労働の問題のほとんどは派遣先の姿勢にあると考えておられると思います。

しかし、これから紹介する記事は、そのことにひとつの疑念を投げかけます。現在、派遣労働者の数は大きく伸び、人材派遣業界は盛況を呈しています。新規参入企業も多く、増収増益の企業も多いのが実状です。まさに時代の寵児に躍り出た感があります。人材派遣業とは、そんなに経営が成り立ちやすいものなのでしょうか。紹介する記事からは、派遣社員を送り出す派遣元の人材派遣業にも大きな問題があるのではないかという疑問がわきます。派遣労働者の待遇の低さは、派遣先の企業だけでなく、派遣元の人材派遣業の内部コスト、手数料にも一因があるようです。

「労働者派遣法」は、今年9月11日改正されて9月30日に施行されました。「労働者派遣法」は、次のように変わりました。
① 「キャリア形成支援制度を持つこと」を条件にすべての業者を許可制にする。
② 派遣期間を満了した派遣労働者が希望すれば、㋑派遣先への直接雇用の依頼、㋺新たな派遣先の提供、㋩派遣元での無期雇用等のいずれかの措置を講じなければならない。

この改正によって、派遣労働者の雇用の安定化、待遇の改善は図られるのでしょうか。人材派遣業には大きな責任が課されたのですが、その実は人材派遣業の繁栄だけに寄与して、派遣労働者の待遇改善にはあまりならないのではないかというのが心配なのです。業界だけ繁栄して派遣労働者は疲弊するという構図が見えて来ると、社会の解体に進んでいきかねません。人材派遣業はどうあるべきか、記事を読んで社会的使命をよく考えてほしいものです。

Business Journal (2015/7/3)に鈴木領一氏〔思考力研究所所(http://suzuryou.com/) ビジネスプロデューサー&コーチ〕が【派遣業界の闇 派遣料の6割をピンハネ?他社より給料1500万も多い異端企業!】と題して、異端企業「リツアン」を紹介されています。http://biz-journal.jp/2015/07/post_10598.html

リツアンは静岡県掛川市に本社を持つ技術系人材派遣会社(社員272名)です。リツアンは、人材派遣業界の悪しき常識を壊し続けている異端児であり、業界のビジネス慣習を根底からひっくり返す可能性があることがわかった。

高い給料
リツアン社長の野中久彰氏にお会いすると開口一番、「弊社の派遣社員と他社の派遣社員を比較すると、10年で1500万円の給料の差が出ます。弊社で働くと家を建てられますよ」と笑顔で語り始めた。世間では給料が低くて不安定というイメージのある派遣で、なぜ10年で1500万円という差が出てくるのか。そこを深掘りしてみると、派遣業界のダークな側面が見えてきた。「派遣先企業から派遣料が月60万円支払われていたとしても、派遣社員に実際に支払われる給料は20万円台です。手取り10万円台前半の派遣社員も多くいました。会社は一人の派遣社員から月30~40万円も利益を得ているのです。クライアントから支払われる派遣料からどれだけ抜かれているかは、派遣社員にはまったくわからないようになっていました」(野中氏)

ソフトウェア、機械設計、研究開発の3つの分野の全国平均マージン率は39.1%だ。しかし、リツアンの場合、入社1~3年の「時給制」のマージン率は29.4%、入社4年目からの「プロフェッショナル契約」では19.1%である。入社4年目以降の平均年収は、実に750万円を超える。野中氏が語った「10年で1500万円の給料の差が出ます」という言葉の根拠がこれなのだ。

業界No.1ともいえる給料を実現させたリツアンには、多くの優秀な人材が集まるようになる。すると予想外のメリットが発生し、会社をさらに大きく押し上げていくポジティブサイクルが回るようになった。

派遣社員の給与明細には、派遣先企業からいくら派遣料が支払われ、リツアンがいくら手数料を取り、社会保険料がいくら引かれているか、すべて記載されている。

低いマージン
高い給料でモチベーションが高くなった派遣社員は、必然的に仕事の評価が上がるようになる。するとリツアンの評価も上がり、新規の派遣依頼につながるようになる。つまり、派遣社員自らが、期せずして営業マンとなっているのだ。その結果、リツアンの営業を担当する内勤社員が少なくて済むようになった。

リツアンはマージンを低く抑えているため薄利である。内勤社員が少なくなるということは会社運営費が少なくなり、薄利でも回せるビジネスモデルを支えることになるのだ。リツアンでは、派遣社員が職場同僚や上司と飲みに行くことを奨励している。その際、一人当たり5000円まで支給するという。その飲み会の場でリツアンの派遣社員の給料の高さを知り、リツアンに入社してくる人も多いという。その活動の成果として、紹介によってリツアンに入社してくる人が8割を超えるようになった。リツアンが低いマージンで経営が成り立つ理由がわかるだろう。

普通の派遣会社の場合、内勤社員が増えざるを得ない構造的な問題があります。マージンがブラックボックスになっているため、派遣社員の会社に対する不信感が強いのです。その結果、モチベーションが落ち、派遣先でのクレームも増えてきます。そのクレームに対応するため内勤社員を増やし、会社の運営費が増えることになります。会社は利益を確保するため派遣社員の給料に手を付けてしまいます。そして派遣社員の不満が増加するという悪循環に陥るのです。

また、派遣社員から『給料を上げてほしい』という要望も増えてくるため、それに対応するためさらに内勤社員を増やさなくてはいけません。だからいつまでたっても人材派遣会社は悪循環から抜け出せず、派遣社員の給料を低く抑えなくては会社を維持することができなくなります。すべてのしわ寄せは派遣社員に集まり、その家族が犠牲になるのです」

アップルウォッチを使った勤務管理
「アップルウォッチを使う理由は、大きく分けて2つあります。弊社の派遣社員は、勤怠管理や派遣料計算などを自分自身で行っています。簡単な操作で毎日の出勤管理と、残業時間の把握、派遣料計算が容易になるため、弊社内の事務管理が少なくなり、彼らの高い給料を維持できるのです。また、派遣先では機密保持のためカメラ付きスマホを持ち込めないため、アップルウォッチは最適なのです」。

さらにアップルウォッチの健康管理アプリを活用することで、派遣社員の健康管理も詳細にできるようになるという。残業が多くなって、健康に支障を来す恐れがある場合、会社として迅速に対応することができる。

いかがでしょうか。検討に値しませんか。

2015年11月 2日 (月)

【報道】「公的年金ランキング、日本は中国より下の23位」より

世界最大級の人事・組織コンサルティング会社マーサーは、2015年度グローバル年金指数ランキング「マーサー・メルボルン・グローバル年金指数ランキング」を発表した。当ランキングは、世界各国の年金制度を比較したもので、各国年金制度を横断的に比較し、かつ最も多角的、包括的に調査した指数である。「マーサー・メルボ ルン・グローバル年金指数ランキング」は今年で7年目になり、認知度が高まっている折、2009年実施当初の11ヶ国から25ヶ国に拡大、全世界の人口の 60%近くをカバーしている。各国の公的ならびに私的年金制度の積み立てや、個人貯蓄などの年金以外の資産についても客観的な評価をしている。

日本は世界主要国25カ国中23位、首位はデンマーク、最下位は昨年に引き続きインドとなった。ランキング首位のデ ンマークは、2012年より首位の座を保ち、総合指数は81.7であった。同国とオランダのみが最高ランク“A”の評価を得ている。十分に積み立てられた 年金制度や、多くの加入者数、優れた資産構成と掛金の水準、十分な給付レベルおよび法令の整った個人年金制度が首位となった主な理由である。デンマークと共にオーストラリア、オランダは3年連続トップ3の順位を維持している。

☆総合指数によるランキング
ランキング 国名 総合指数
1 デンマーク 81.7
2 オランダ 80.5
3 オーストラリア 79.6
4 スウェーデン 74.2
5 スイス 74.2
6 フィンランド 73.0
7 カナダ 70.0
8 チリ 69.1
9 イギリス 65.0
10 シンガポール 64.7
11 アイルランド 63.1
12 ドイツ 62.0
13 フランス 57.4
14 アメリカ 56.3
15 ポーランド 56.2
16 南アフリカ 53.4
17 ブラジル 53.2
18 オーストリア 52.2
19 メキシコ 52.1
20 イタリア 50.9
21 インドネシア 48.2
22 中国 48.0
23 日本 44.1
24 韓国 43.8
25 インド 40.3
平均 60.5

■「メルボルン・マーサーグローバル年金指数」

当調査の指数はマー サー社の協力とビクトリア州政府による資金提供の下、オーストラリア金融研究センター(ACFS)によって開発されている。評価指数は40以上の質問項目 から構成されており、「十分性(Adequacy)」、「持続可能性(Sustainability)」、「健全性(Integrity)」に大別される (※調査方法の詳細は別表"FACT SHEET" を参照のこと)。長寿リスク、高齢者の人口割合増加、長寿化による貯蓄額の不足など、現在多くの退職者が直面しているリスク – 経済的、社会的にも大きな問題となる可能性がある-から市民を守るため、各国政府がどのように適切かつ持続可能な給付の提供をし得るか、について提案して いる。

老後の所得として定期的に給付を受け取れるシステムがあることと、老後のための充分な貯蓄があるかを測った「十分性」(40%)、年金制度に優良なガバレッジ(年金の義務化など)や平均寿命と支給開始年齢の関係が適性か、国家の破綻リスクがないかどうかを見た「持続性」(35%)、包括的な規制が設けられ、年金制度をうまく運用するための見直し機能や透明性があるかどうかという「健全性」(25%)――だ。

首位のデンマークには「国民年金」「労働市場付加年金」「早期退職年金」の3種類の年金がある。国民年金は、国民が最低限必要な生活を送るための年金、公平性を保つために毎年配給される年金は調整されている。そのため、高所得者の中には国民年金がもらえない人もいるほどだ。

しかし、これがデンマークでは成り立ってしまう。デンマーク人独特の「共生」の精神の上に成り立っている。「みんなが幸せならば、自分に見返りがなくてもいい」と考える。そして国民一人一人が完全に「国の政治家」を信頼している。これは投票率90パーセント以上ということにも顕著に現れている。デンマークも高齢化は問題になっているものの、医療費無料、在宅介護サービスも無料と高齢者福祉も充実していることも好影響を与えていると考えることができる。

日本、中国、韓国のランキングは、次の通りであった。

・中国:22位、総合指数(48.0)、十分性(62.7)、持続性(29.8)、健全性(50.0)

・日本:23位、総合指数(44.1)、十分性(48.8)、持続性(26.5)、健全性(61.2)

・韓国:24位、総合指数(43.8)、十分性(43.9)、持続性(41.6)、顕在性(46.8)

日本の総合評価は「D」、最も低い持続性は「E」、十分性は「D」、健全性は「C+」とされている。日本の総合評価が低い理由は、年金給付による現役世代の年収と年金給付額の比率が低いことによる年金給付の十分性への懸念が挙げられる。また少子高齢化が進んでおり、公的年金の期待支給期間が長いことにより年金制度の持続性への懸念も挙げられている。

マーサーは具体的な方策として、「家計貯蓄額の見直し・増加」「現役世代の年収と年金給付額の比率の改善」「退職金の一部を収入源とすることを制度として確立」「高齢化に伴う公的年金の支給開始年齢の引き上げ」「政府債務残高GDP比の引き下げ」――を提案している。

マーサージャパンの 年金コンサルティング部門シニア・アクチュアリーの塩田強は以下の通りコメントしている。
「日本の年金制度の総合評価は前年度とほぼ同じ結果となりました。世界各国の中でのランキングでみると、残念ながら前年度と同様に下位の評価となっています。 日本の総合評価が低い主な理由としては、年金給付による所得代替率(現役世代の年収と年金給付額の比率)が低いことによる年金給付の十分性への懸念およ び、公的年金の期待支給期間(平均余命と年金支給開始年齢の差)が長いことによる年金制度持続性へ懸念等が挙げられます。
2015年は、公的 年金において支給額の伸びを賃金や物価の上昇分より抑えるマクロ経済スライドが初めて発動された年になりましたが、他国と比べても少子高齢化の進展が進んでいる日本においては、持続可能な年金制度となるために必要な対応を早急に実施することが求められています。公的年金制度が見直されていく中では、老後の 生活保障として、公的年金だけに頼るのではなく、公的年金を補完する役割を担う企業年金制度の役割がますます重要になっていくと想定されます。各自が改め て企業年金制度の役割についても検討することも重要となっています。」

今年度の調査結果でも、世界共通で適用可能な完璧な年金制度は存在しないということが明白になったが、個々の国にとってより良い制度構築のために共有されるべき、多くの共通した特徴が明らかになった。

マーサーのシニア・パートナーであり、当レポートの責任者でもあるデービッド・ノックス博士は次のように述べている。
「私たちの7年間のスナップショットは、年金基金の年金支給開始年齢変更、高齢者の労働市場への参 加拡大、将来の退職給付金のための追加積立金、などの施策の重要性を浮き彫りにしています。年金制度を改革し、退職後の経済的安定を保証するための適切な改革を行うタイミングとしては、個人にとっても社会にとっても、今しかありません。
当ランキングは、各 国の政策立案者が、持続可能でかつ、十分性が高い年金制度から学び得る重要な参考資料です。各国共通で適合し得る完璧な年金制度は存在しないということは承知していますが、個々の国におけるより良い制度構築のために共有されるべき、多くの共通した特徴があることも事実です。」

http://japan.cnet.com/release/30120637/

http://www.msn.com/ja-jp/news/money/%e3%80%8c%e5%85%ac%e7%9a%84%e5%b9%b4%e9%87%91%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%82%ad%e3%83%b3%e3%82%b0%e3%80%8d%e6%97%a5%e6%9c%ac%e3%81%af%e4%b8%ad%e5%9b%bd%e3%82%88%e3%82%8a%e4%b8%8b%e3%81%ae23%e4%bd%8d-%e4%bd%8e%e3%83%a9%e3%83%b3%e3%82%af%e5%b8%b8%e9%80%a3%e3%81%ae%e6%97%a5%e4%b8%ad%e9%9f%93%e3%81%a8%e4%b8%8a%e4%bd%8d%e3%83%bb%e6%ac%a7%e5%b7%9e%e5%8b%a2%e3%81%ae%e9%81%95%e3%81%84/ar-BBmH7Ao#page=2

世界から見た客観的な評価は、私たちが不安に感じていることとほぼ一致しているのではないでしょうか。デンマークのように信頼できる国になれれば未来は開けると思うのですが。

 

2015年2月 8日 (日)

農協改革の先にある「自由競争」という新たな試練

全国に約700ある地域農協の相違工夫を促す政府の農協改革の骨子が決まったようだ。全国農業協同組合連合会(JA全中)の監査・指導権をなくし、一般社団法人に転換するというのが骨子である。1954年に始まった農協中央会がほぼ60年ぶりに見直されることになった。JA全中は受け入れる方向だという。

制度疲労を起こしていた農協が新たな時代に向けて改革されることは、時代の要請である。しかし、この先には「自由競争」という厳しい試練が待ち受けている。新たな時代に向けて知恵を巡らせないと競争から脱落して悲惨な運命にさらされることになりかねない。

現在、農業を取り巻く状況は激変している。2009年の農地法の改革(平成の農地改革)によって、個人や企業が農地を取得し農業に参入しやすくなった。海外企業でも農地を取得し、農業生産法人にも投資できるようになっている。また、国家戦略特区諮問会議では企業が農業生産法人に50%超出資する(現在は25%)ことなどの緩和策が検討されている。片方では、TPP交渉によって農畜産品の関税撤廃論争が協議されている。否応なしに農村と農業は競争にさらされていくだろう。いかに戦略を巡らすかが問われるところである。

農業大国として優位であると思われているカナダの農協を取り上げて、今後の参考にしてみたい。

カナダは、1989年に米国と自由貿易協定(FTA)を結んだ。その後10年経った1997年にはカナダ農業の集荷・加工・流通のほとんどが米国の巨大アグリ企業によって抑えられるに至った。かつてカナダの農協が担っていた分野は、米国のアグリビジネスという巨大企業に取って代わられたのである。FTAの背後にアメリカ巨大多国籍企業の戦略があったといえよう。

〈ノーベル経済学賞受賞者のポール・クルーグマン教授は、アメリカ、グアテマラ、エルサルバドル、コスタリカ、ホンジュラスの中米5か国及びカリブ海のドミニカ共和国が2004年に調停したCAFTA(中央アメリカ自由貿易協定)という貿易協定について調べたが、TPPと同じようにアメリカ国民の利益を目的にしているというより、製薬会社の利権を反映しているのではないか,という部分が少なくなかった」と語っている。〉

イアン・マクファーソン カナダ・ビクトリア大学教授が白石正彦 東京農業大学食料環境経済学科教授との対談「カナダにおける農業・農村の現状と協同組合・NPOの役割」の中で、カナダの状況を次のように語られている。

●ここ50年間に急激な農業構造の変化を経験しました。50年前の農場数は60万でしたが、今は25万弱に激減し、高齢化しています。農民は経済主義的に走り、社会的関心が薄くなっています。

●加工分野では多国籍食品企業の販売力が市場に大きく影響し、農業者はなかなか市場にタッチできない状況です。食品産業が取り扱う農産物は大変増えました。例えばカリフォルニアのあるストアは多くの農業者をたばね、品質、数量、出荷時期まで細かく条件をつけて農産物を調達しています。こうして企業による物流ルートができてきています。種子についても開発と流通面で多国籍食品企業が大きな力を持っています。

●(協定国の米国とメキシコに)牛や豚を輸出するにしてもアクセスが難しく、米国は果実の輸出にも文句をつけてきますし、メリットは余りありません。

農協について

19世紀後半にサスカチュワン州でスタートした小麦販売農協は、10年前に市場の状況変化で財政的な困難に陥り、改革を迫られました。そして事業の多角化と企業化の方向を打ち出し、組合役員のうち3人を員外者としましたが、協同組合本来の体質のキープが難しい状況です。それから、ブリティッシュコロンビア州の酪農組合がイタリアの企業に買い取られるという状況もあります。

株式会社化は一つの流れですが、それが協同組合にとって良いことかどうかは疑問です。現実に外部資本の導入はいくつかの組合だけです。ケベック州にある大規模な酪農協同組合は株式会社化の動きを拒否していますが、今後も組合運営は持続されると見ています。

問題は、農協が資本を十分に持っていないことです。大農場はあっても、すべての農場から出資金をさらに集めて組合を維持する力を持っていないし、地域金融機関から借り入れることも難しい状況です。だから多国籍食品企業が買い取りやすい。これは農業の分野だけでは対応できない問題です。

問題点の第一は、企業化した協同組合が、どちら側の活動をしているか、はっきりしないことです。第二は、輸送や通信の分野で、どのように事業運営をしていくかです。第三は、組合員が高齢化して、やめていく場合に出資金の戻しで財政的困難が起きていることです。第四は、農産物とくに穀物の価格が不安定で、収入も不安定だということです。サスカチュワン州の小麦農協は食品加工業を目指しており、それは良いとしても、資金不足と、市場の需要に合わない部分、さらに契約先の厳しい条件などに活動を制約されています。

将来の営農形態

大規模な生産体制が将来の一つの形です。900~1500ヘクタールほどの穀物農場経営を想定しています。協同組合経営です。ただ組合員の農業者はそれぞれ家族でやっていますから、掘り下げていえば、家族的な農業を基盤とした大規模なコーポラティブファームといえるでしよう。3、4人で大型機械を使えば大農場でも運営できます。

(農業協同組合新聞)http://www.jacom.or.jp/archive01/document/tokusyu/toku148/toku148w04102607.htm

自由化の波に洗われたカナダの農協は、運営の指針、活動内容を失いがちになり、資金も不足して財政的にも困難に陥ったというのである。このことは、日本の地域農協すべてが今後直面する課題ではないか。農産物の集荷・加工・流通をどこまで行い、外部のどこと組んでいくかが重要になると思われる。

また、イアン・マクファーソン氏は「農民は経済主義的に走り、社会的関心が薄くなっている」と指摘するとともに、「村の状況は人口の変化やコンピュータによって変わってきており、コミュニティも弱体化の傾向にある」といわれている。「特徴的なのは、ソーシャルコーポラティブ(社会的協同組合)という組織の出現で、健康管理とか高齢者福祉などの活動をしています。これは州政府が行政サービスから手を引いてきているからである」と。

日本の農村の状況を踏まえると、カナダの状況は他人ごとではない。農村の共同体的結束をいかに守るかが重要な課題となってくる。

ところでこの60年農協が果たしてきた役割はあまりにも大きい。農協なくして日本の高度成長も、田舎の安定もなかった。そのことについては異論はないであろう。海外からも日本の農協に対して高い評価が寄せられている。

サーチナに、日本の農協制度に対する賞賛の記事が掲載されている。【日本を手本にせよ! 「農業対策は60年代から」に中国で驚嘆の声】(2015/2/8)概要を転記した。

中国の国家行政学院経済学部の董小君副主任は、日本政府は高度成長が始まる前から「三農問題」の解決に取り組み、大きな成果を上げたと、高く評価する文章を発表した。

董副主は、池田内閣は(1960年の)所得倍増計画の次に、61年には農業基本法など一連の立法で「農業従事者の収入を引き上げ、その他の産業従事者と同一の生活水準を実現する」ことを目指すようになったと紹介。

日本政府は農家を手厚く保護した。その代表例が、農家の所得を向上させる「生産者米価」の制度だ。効果は農産品全般に及び、60-69年で農産品価格は95%上昇したと紹介し、農家の収入増は農業の機械化と工業製品にとっての市場拡大ももたらしたと評価した。

さらに農業協同組合が農業の発展に大きな役割を発揮したと紹介。日本では地主・小作農の社会構造を排して小規模農家を多く誕生させ、小規模農家を農協が組織し、政府が保護を加える「三位一体」の構造を実現させたと論じた。

さらに、農村における余剰労働力の、工業などへの振り向けの対策も怠らなかったと紹介。まず、日本では中国とは異なり、戸籍の移転が自由であることが「鍵」になったと主張。都市部では公営住宅などを整備し、農村部出身者の居住を保障したと紹介した。

さらに、労災や雇用保険など各種の社会保険を整備したことにも注目した。「企業の負担を増加させたようにもみえるが、実際には企業に対して労働力の供給を確保することになった」との考えを示した。(略)

董副主任は、農業問題や農村出身の労働者の問題について「日本では、経済が発展した後に対策を施したのではない。日本経済が向上する最初の段階から、1歩1歩実施した」と指摘。中国では、「三農」問題や「農村部から都市部への移転者」の問題は「解決が最も困難な任務」になっていると改めて指摘し、日本の経験を参考に、中国も実効力ある政策を実施すべきだと主張した。

http://biz.searchina.net/id/1560698?_ga=1.50955753.1901303423.1395036919

2014年11月29日 (土)

国家戦略特区制度は順調に進展している。(4)構造改革はできる(成果と今後の課題)

4-1、規制緩和《規制改革》突破口としての役割は成功している

 

 

 

規制というものは、実際に事業を行うとか行動を起こすかしないとぶつからないものである。何かをしようとした時、はじめて規制というものに遭遇することになる。そういう意味で、規制緩和は現場で考えてはじめてそのもつ意味と不合理性を知ることができる。

 

 

今回の国家戦略特区制度は、国・地方自治体・民間が従来の距離を置いた関係から脱して、現場主義(特定事業)を貫いたことに大きな成果がある。特定事業として具体的な事業があるからこそ、関連する規制が浮かび上がってくるのであり、改革の方向が見えてくるものである。まだ挑戦は始まったばかりであるが、一つの事業という最もミクロな観点から障害となる規制条項を突き止め、その問題点を取り上げているため、抽象論、普遍論に陥るという弊害に陥っていない。往々にして、「それはそうだが、こういうことも考えなければ」という普遍論の前に行き詰まることなるのだが、具体的な事業の中で考えるという前提の中では、普遍論・全体論に陥らなくても済む。そのため、地域だけの特殊解を導くことができればいい。その解が普遍性をもつのであれば、全国の規制緩和につなげればいいのである。

 

 

第二にこの制度を成功に導いていると思うのは、従来の国(政府)、地方公共団体、民間事業者の関係から脱して、区域会議をミニ政府として機能させようとしていることである。「お上と下々」の関係をふり捨てて、三者が一つになって区域の未来を考えていくというスタンスを築いていることである。まだ、議事録を読むと従来の関係の意識がぬぐい切れていない面があるが、三者の共通目標は同じである。この地域の未来を創るという情熱である。この情熱が、短期間の間に国家戦略制度の進展の原動力となっている。

 

 

しかし、特区制度は始まったばかりであり、規制改革の方法に光が見えて来たという段階である。今後も試行錯誤が続くことになるはずである。これからも多くの規制や反対論にぶつかることになるだろう。新たな事業も始まるであろう。地域の住民間に対立が生まれるかもしれない。しかし、今回光を見出した規制改革の方法は、大きな力になるはずである。構造改革は実現できるといいたい

ただ地域づくりには長い道のりが待ち受けていることを考えた場合、次の段階に向けての課題も明確にしておくことが重要であろう。

 

 

4-2、特区制度の次の段階に向けての視点

 

 

国家戦略特区制度は、6か所の特区において第1回目の特別区域会議を終え、いよいよ動き出すことになる。特別区域計画も3か所においては認定されており、具体的に目に見える形になる。事の成否が多くの人に見える形になるだけに、反面強い反対も出てきやすい。規制緩和の揺れ戻しという現象が起きかねない。

 

 

竹中平蔵慶応大学教授(国家戦略特別区域諮問会議有識者議員)は、成長戦略の肝は、規制緩和と法人税減税であると述べられているが、規制緩和という方針を一方的に進めるだけでは無用な敵を作ることになりかねない。会議の議論の中で、坂村議員が言われているように、「時代に合った合理的な規制に改革している」というスタンスに立ち、改革に伴う軋轢を如何に少なくするかが重要になってくる。

このため、二つの視点を明確にしておくことが大切であるように思う。

 世界一ビジネスのしやすい国を目指すのではなく、世界一生活しやすい国を目指す。

 

国家戦略特区制度は、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出することを目的とすることをうたっている。しかし、経済が重要であることは論を待たないが、ビジネスだけではなく生活全体が世界一しやすい国を目指すということに拡大すべきではないか。一地域の国家戦略特区の中には、ビジネスでの関わり合いがない人もかなりいる筈である。しかし、その人々もその地域に生活している特区の関係者である。このような地域の人々の理解を得ることなくして、この制度の進展は望めない。

 

私は、かつてのブログで、大英帝国が勃興し始める18世紀初頭アダム・スミスが活躍し始める前、フランス人のヴォルテールがイギリスに旅行して、商業精神の発達及びそれに伴う商人階級に対する社会的認識に感銘を受けていたことを記述した。この商人精神こそが近代国家としてのイギリス・大英帝国を築いていった。今、日本は世界中から清潔でやさしい国であると評価を受けるようになった。大英帝国勃興の頃を念頭に置いて、「世界一生活しやすい国」を目指すことに拡大すべきではないか。

 

ヴォルテール「取引所に入ってみたまえ、そこであなたの眼に映るものは人々の利益のために集まっているすべての国の代表者たちである。そこではユダヤ人、回教徒、キリスト教徒たちがまるで同一宗教の信者のようにお互いに取り引きしている。破産する者以外は、『不信者』の名前をあたえられない。(中略)イギリスには、30もの宗教があってみなが平和で幸福に生活している。」

上田辰之助著作集4「蜂の寓話-自由主義経済の根底にあるもの」みすず書房1987

     

 

 規制緩和に反対する人は、抵抗勢力ではない。

       

規制緩和に反対する人を抵抗勢力として排除しかねない風潮がある。この風潮は大変危険なものである。反対する人にもそれぞれ理由がある。一番の理由は、新しい規制(新時代の合理的な規制)に移るには不安がある、というものである。その中でも生計に関わることが一番大きいだろう。社会の変革期には、どうしてもこのような将来不安が生じる。この不安をいかに解消するかが重要となる。このためにさまざまな方策を講じることが大切である。

 

坂根議員が規制緩和を実現するためには、マクロアプローチとミクロアプローチの両方が必要であると語られているように、どのように人々の不安を解消していくか、まず敵視することをやめることが大切である。反対しているどんな人も、できる範囲では地域のために役に立ちたいと思っておられるはずである。反対している人の意見に耳を傾け、その意見に応える努力をしてはじめて真の解決策を見いだせるのではないだろうか。

     

 

≪竹中平蔵慶応大学教授の見解≫

私は、2001年から2005年まで4年半、経済財政政策担当をやらせていただきましたが、その間、成長戦略なるものを1回も作っていません。その後から、成長戦略を毎年政府が作るようになり、政府が成長戦略を作るようになって、日本の成長率は見事に下がりました。成長戦略といっても、そんな打ち出の小槌のようなものはないということです。成長戦略とは、付加価値を見出す企業・民間部門ができるだけ活動しやすいように規制を緩和すること、そして、法人税や公共料金など負担をできるだけ軽くすること。それしか、王道の成長戦略はありません。規制緩和と法人税減税が、成長戦略の胆です。・・・

2014419日シンポジウム「養父市の挑戦、国家戦略特区で日本の農業はどう変わるか?」より)

 

 

 

          

 

4-3、計画ビジョンの提示が重要となる

 

     

 

どんな民間企業でも新規事業が明確になると、目標を立てて事業に取り組むことになる。目標を立てることによって、関係者の意識をまとめて取り組む姿勢を一つにすることができる。その目標も、具体的な目に見えるものであればあるほど、客観的な指標として共有しやすい。また、事業の進展状況を把握しやすく事業の評価をしやすい。

 

 

    

国家戦略特区の区域計画も、事業が決定したのちは、計画ビジョンを提示することが必要になる。それは、事業に直接携わる人・団体の内部向けにだけではなく、対外的にも計画ビジョンを示すことが重要になってくる。地域の人にどのように地域が変革されていくのかを知ってもらうことによって、人々の不安を軽減するだけでなく希望を抱いてもらい、計画の協力者・推進者になってもらう意味で重要である。計画ビジョンは、地域の人々の将来に対する意識を取りまとめて、地域づくりの大きな力とするために重要なのである。

 

    

 

この計画ビジョンは、従来型の目標を立てて強引に引っ張るものではない。事業から導き出されたボトムアップ型の計画ビジョンである。このビジョンをどのように示すことができるかで、その後の展開が違ってくるはずである。

計画ビジョンは、次のような特徴を備えることが重要である。

 事業の直接効果(影響)と波及効果(影響)の部分に分けて示すこと

 地域の全体像を示すこと

 数値目標を示すこと

 ロードマップ(年次計画・進捗状況)を示すこと、など

    

 

国家戦略特区制度においても、区域計画の評価について言及している。今後は、計画策定と評価が重要になってくると思われる。

 

国家戦略特区の評価

・区域計画の実施が及ぼす経済的社会的効果を、数値化等も含めできる限り具体的に設定。

・評価項目は、次の項目。

ア)特定事業の進捗状況、イ)経済的社会的効果、ウ)目標の達成状況、

エ)規制の特例措置の活用状況・効果(弊害も含む。) 等

・地方公共団体及び事業者が評価を行った上で区域会議が評価を実施し、内閣総理

大臣へ報告。

・内閣総理大臣は、評価結果について、公表するとともに、諮問会議から意見を聴取。

・諮問会議は、関係府省庁の意見聴取を行い、規制の特例措置の全国展開も含め、調査審議。

・評価結果を踏まえ、区域計画の変更、認定の取消、指定の解除等適切に措置。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/kihon_gaiyo.pdf

 

    

 

4-4、特区から全国へ【全国活性化原則】

 

 

     

 

国家戦略特区には特区の効果をいずれは我が国全体の経済活性化に繋げるという【全国活性化原則】がある。この目的なくして日本を再生することはできない。この目的を達成するためには、各特区の成果及びビジョンを適宜情報発信することが重要である。また、全国各地で特区ではないが同じような地域づくりの運動が盛り上がることが重要である。

 

最後に、できるだけ多くの人が地元の地域づくりに参加することを願っています。

 

国家戦略特区制度に携わっておられる関係者各位のご尽力に敬意を表します。内容に誤り等がございましたら、すべて私の不徳の致すところでございます。

 

国家戦略特区制度は順調に進んでいる。(3)議論の中から

会議の中では、こんな議論がなされている。

 

●規制緩和というよりも時代に合わせた規制といった方がいいのではないか。

(坂村国家戦略特別区域諮問会議有識者議員) 規制緩和という言い方が誤解を招いているような感じがしまして、緩和というよりは規制を時代に合わせて合理化するとか、そういうスタンスだと明確化したほうが誤解を招かないのではないか。

 

 

●地域で責任をもって行って頂く。そうであれば、政府は全面的に支援する

(石破国家戦略担当大臣)地方創生というものが大きなテーマになっておりますが、今までもやってきたではないかということですが、今回やらないと大変なことになる。地方も衰退、消滅に向かい、限界集落がやがては限界国家になるという危機感が従来とは違います。

もう一つは、国を挙げてというのは政府が何かやってくれるでしょうというお話ではなくて、地域でこれをやる、これをやればこのような効果が上がるものである、よって、国は支援をされたいということの挙証責任は地域に負っていただくということでありますし、そうであれば政府として全面的にそれを支援する、ということが今までと異なっております。

 

 

●規制緩和は、原則○こういう場合は×でないと動かない

(手代木塩野義製薬代表取締役社長)最初の規制緩和でございますが、これにつきましては山田知事がおっしゃっておられることと全く一緒でございまして、いろいろお願いしてみると、現在の枠組みでもうまく組み合わせれば、何とかやれますというお答えを関係省庁から随分後になってからいただくことが多いわけです。こうした過程を通じて思うことは、発想を転換しないと無理だということです。「基本的にはだめなんだけれども、これだけの条件がそろったら○です」では動かない、「原則は○、こういう場合だけは×」というふうに発想を転換しないと動かないだろうと我々は思っております。

 

 

 

●再生医療実施に当たって、アイセンター設置

(井村公益財団法人先端医療振興財団理事長) 再生医療を実施する上で重要なことは、もちろん病院が必要ではありますけれども、従来型の病院だけではなくて、患者さんのリハビリをやることが必要である。そういうことを考えますと、センターをつくって、そこで病院機能だけではなくて研究、リハビリ、細胞をつくる施設といったものが必要になってまいりますので、アイセンター30床の病院をつくって再生医療を進めていきたい。諸外国にはかなり立派なアイセンターがあるのですが、日本にはまだないのです。(事業決定)公益財団法人先端医療振興財団が神戸市内に神戸アイセンターを平成27年に着工して、29年に開業する予定。そこに今回の規制改革メニューを活用した新規の病床30床を有する眼科病院を開設する。ここでは世界初のiPS細胞を用いた網膜再生治療などの最先端の臨床研究が行う。

 

 

 

●混合診療・先端医療の大学への権限移譲を

(松井大阪府知事)混合診療をやれる病院につきましては、要は海外で承認されている薬、国内では未承認だけれども、先進医療をするに当たって今までは6カ月かかっていたものが3カ月に縮めてもらったのだが、これは岩盤規制突破に向けた一歩。まさに海外で使われていた薬であれば6カ月の審査期間を3カ月ということではなくて、それは全面的に研究機関である大学病院ですから、認める。こういう形にしていただくほうがより進んでいくのではないか。(中略) 大学病院というのは研究が主です。このアベノミクス、岩盤規制を突破すると言うのなら、実際に治療できる病院に権限を与えていただきたい。これは成人病センターのがん患者というのは難治性ですから、そもそも病気によって命にかかわる状態になっております。そういう病院で速やかに先進医療を患者に受けていただくことによって、患者も最後の砦になると思うのです。今の治療法ではなかなか完治できないからこそ先進医療の治療を受けたい。こういう思いを持っていますので、ぜひそこは早期に指定をいただきたいと思います。 今、省庁と話をしていますと、要はデータをとる人がいるとかいないとか、そういう本当に隅っこの話でなかなか認めていただけません。ぜひその辺をスピード感を持って、大臣の言われるように、本当に早いスピードで決めていただきたい。

(八田国家戦略特別区域諮問会議有識者議員)これは岩盤規制なのです。これは中核病院だけでなくて、これから広げるわけです。ただし、混合診療は、治験に活用するという立てつけです。ところが治験に関しては、随分大学病院でもいい加減なことをやっているところがあります。そこでの基準というのは単に大学病院だとか、研究ができるというような基準ではなくて、治験に関して随分いろいろなことがありました。したがって、ガバナンスがしっかりしているかといった新たな基準をつくっています。

(井村理事長) 今の問題と少し違いますけれども、こういう例が1つあります。それはある大学病院と神戸のある企業が連携して研究を進めているわけですが、薬事法未承認の検査試薬を先進医療として使う。そのときに大学病院で採取した検体を神戸に運ぶことはできないということになっているのです。それで非常に機器が高くつくので、その大学病院にもう一つそろえることはできない。

 

 

iPS細胞を使った創薬

(服部島津製作所代表取締役会長)最近、京大でiPS細胞を難病のための創薬研究に応用し成功されました。山中先生をはじめ多くの研究者が創薬の研究にiPS細胞を使おうと試みています。そのためには疾患を持った患者の血液から作成したiPS細胞を供給できる体制が不可欠です。しかし現行法のもとでは一般企業が血液を自由に取扱い、その生成物を販売することは日赤以外できません。

 

 

●時代遅れのばかばかしい規制

(坂根国家戦略特別区域諮問会議 有識者議員)1つは除雪車。建設機械は世界中、運転席は一つなのですが、日本の除雪車は普通、必ずシートは2つ置きなさいとなっている。自動的に土地をならしてくれるブルドーザーを開発して、去年からアメリカでどんどん売れていますが、日本の公共工事は仕上げた後を必ず人が丁張りを張って調べなさいということになっていて売れていない。

 

 

 

●国の組織にも改善提案の組織を

(坂根議員) お役所というのは規制を新たにつくる仕事がメーンだと思いますけれども、一方でこれを省く仕事を同時にやる部門をぜひつくっていただきたい。会社でいいますと改善提案というものを現場はしょっちゅう出しているわけです。国だってそういう改善提案を出すことを評価する動きがあってもいいのではないか。

 

●規制緩和には、マクロアプローチとミクロアプローチの両方が必要

(坂根議員) どんな岩盤規制もマクロアプローチ、いわゆるトップダウンと、ミクロアプローチ、つまりボトムアップが合体しない限り突破できない、と考えています。具体的には、我々の企業の商品開発の例でも、規制でがんじがらめになったものが多数あり、それだって規制を突破してこれているわけです。我々は物づくりのDNAを持っているもので、「なぜこうなっているのか?」とすぐ聞きます。米は何故こんなに品質にばらつきが出るのか、どうして米の検査は江戸時代から変わらないのか、何故精米して保管するのか、何故籾で保管しないのか等、ありとあらゆることを聞きます。ところが返ってくる答えが、およそ別世界でして、聞けば聞くほど、色々な知恵出しができるのに、なぜこうなってしまったのか、という思いを強くしています。その中で様々な指導をしているうちに、こういう営農技術の指導をするのは本来農協の仕事ではなかったのですか?市の農業委員会は何をしてくれるのですか?と聞いてみると、だんだん農家の人も市民も、農協の役割とは何だろうか、農業委員会の役割は何だろうかと疑問が出てきています。私が申し上げたいのは、そういうミクロの部分をやっていく中でそれぞれの役割というものが改めて問い直されて、本当に無駄なものならやめなければいけませんし、本来の役割を果たしていないなら変わらねばならぬ訳です。

そういうミクロの部分をやっていく中でそれぞれの役割というものが改めて問い直されて、本当に無駄なものならやめなければいけませんし、本来の役割を果たしていないなら変わらねばならぬ訳です。

 

 

●まず自らが率先することが大切

(坂根議員) ファンドについて、私共が金を出したとしてもいつまでも続けるわけにはいきません。JAは資金があるのだから、ファンドをつくったらどうですかと言ったら、いや、先の見通しが余りはっきりしないものにファンドは出せないということでした。そこで、地元銀行と私共がファンドを出したところ、県も出すことに賛同しました、こうなってくるとJAも変わってくる訳です。

 

 

●特区頼みで考えるな。地域をどうやって元気にするかが大事

(坂根議員) 私は特区頼みで考えるなと申し上げています。最初にどんな特区をつくろうかと考えた途端にそのプロジェクトは恐らく失敗する。石川をどうやって元気にするのか、小松市をどうやって元気にするのかという発想の中で、いや、どう考えたってここの規制はがんじがらめでどうしようもないということになれば、そこで特区を申請しようじゃないかとなって、はじめて特区の成果を期待出来ると思っています。私は養父市に行っても同じことを申し上げましたが、特区だけが元気になっても、新潟全体が、あるいは新潟市が元気にならなかったら成功だと言われないと思います。

 

●補助金頼みの仕事には魅力がない。知恵を出すものがあって若者は魅力を持つ
(
坂根議員)
何か技術開発みたいな知恵を出すものがあるから、若い人も興味を持つのであって、農業も技術開発のテーマが沢山あるわけです。ですから、そういうテーマが次から次に出るようになって初めて若い人が魅力を持ち、かつやったからには成果がしっかりと評価される必要がありますから、今のような補助金で成り立っているようなものだったら、恐らく若い人はやってみようという気にならないだろうと思っています。

 

 

●区域会議はミニ政府としての機能をもたないと

(八田議員)知事がおっしゃるようにスピードを上げなければいけないというのは当然なのですが、そのためには区域会議がミニ政府としての機能を持つ必要があると思うのです。ここは陳情の場ではなくて、お互いに議論をして、そして、これは規制改革会議に上げよう、これは区域会議でもって諮問会議に上げていこうという仕分けをしてやっていく必要があるのではないか。そのためには区域会議の事務局に知事の方々や特区の政務とお話ができるような人を置いて、そして、大臣がいらっしゃる会議の前にかなり議論を絞って、ミニ政府としての機能を果たすような仕組みに持っていく必要があるのではないか。

国家戦略特区制度は順調に進展している。(2)国家戦略特区制度

  2-1、国家戦略特区制度の発足と特区の指定  

国家戦略特別区制度は、「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-」(H25.6.14 閣議決定)において創設が決定した。創設に先立ち、産業競争力会議においてこれまでとは次元の違う国家戦略特区(仮称)の創設の検討が提案されたことを受けて、国家戦略特区の具体的な制度設計等の検討を行うため、国家戦略特区ワーキンググループが設置された。国家戦略特区制度は、この「国家戦略特区ワーキンググループ」の会合(平成25年5月10日から平成26年1月28日まで8回)において制度の中味が検討されてきた。

検討にあたっては、「国家戦略特区は、大胆な金融緩和、財政政策に続く、日本経済再生の「第3の矢」である成長戦略の中心となるものと位置づけられ、先導的な国家戦略のプロジェクトとして、総理主導の下でスピード感をもって進めていくこと」を大前提としている。また、世界で一番ビジネスのしやすい環境をつくるためには、イノベーションを日本でおこす必要がある。そのための課題としては、インフラ(法律を含む)、資金、人材の3点あるという認識に立っている。

平成25年10月18日には、「 国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針 (日本経済再生本部決定)」が決定され、規制改革の方向が明確になった。また、平成25年11月5日には、「「国家戦略特別区域法(案)」が閣議決定され、政策として具体的に実施されることになった。国家戦略特別区域法は、平成25年12月7日成立し、平成25年12月13日に公布された。

「国家戦略特別区域法(平成二十五年法律第百七号)」は、 経済社会の構造改革を重点的に推進することにより、産業の国際競争力を強化するとともに、国際的な経済活動の拠点の形成を促進する観点から、国が定めた国家戦略特別区域において、規制改革等の施策を総合的かつ集中的に推進するために必要な事項を定める、としている。

この法律に基づき、国家戦略特別区域諮問会議は、平成26年1月7日より始まっており、9回開催されている(直近の会議は、10月10日)。平成26年3月28日には、国家戦略特別区域諮問会議(第4回)において、6か所の国家戦略特区が発表された。発表された特区の指定区域・内容は次の通りである。

• 東京圏(東京都・神奈川県の全部または一部、および千葉県成田市) - 国際ビジネス・イノベーションの拠点

• 関西圏(京都府・大阪府・兵庫県の全部または一部) - 医療等イノベーション拠点、およびチャレンジ人材支援

• 沖縄県 - 国際観光拠点

• 新潟県新潟市 - 大規模農業の改革拠点

• 兵庫県養父市 - 中山間地農業の改革拠点

• 福岡県福岡市 - 創業のための雇用改革拠点  

「日本再興戦略」改訂2014(平成26年6月24日閣議決定)において、国家戦略特区は2015年度まで、つまり2年間を集中取組期間とし、いわゆる岩盤規制全般について突破口を開いていくものとされた。  

その後も精力的に検討が進められ、6か所の特区の国家戦略特別区域会議は、10月26日に開催された沖縄国家戦略特別区域会議をもって、すべてで第1回目の会合を終えている。開催が遅れていた東京圏も10月1日に開催されている。

国家戦略特別区域計画も、現在までに3か所において認定されている。 [関西圏の区域計画(H26.9.30認定)、養父市の区域計画(H26.9.9認定)、福岡市の区域計画(H26.9.9及びH26.9.30認定)] いよいよ動き出すという時期を迎えている。  

2-2、国家戦略特区と総合特区との違い  

従来の特区制度と今回の国家戦略特区制度との違いについて、首相官邸のウェブサイトでは、次のように説明している。

〈総合特区は、地域の発意に基づき、地方公共団体による申請を国が認めて特区を指定する制度であり、いわば地方の要望に応えるという枠組みとなっています。 これに対し、国家戦略特区は、地方公共団体の提案に対し、○×を付けるのではなく、民間、地方公共団体と国が一体となって取り組むべきプロジェクトを形成し、国が自ら主導して、大胆な規制改革等によりその実現を図るものです。 また、総合特区については、当該地域の提案を受けて、規制の特例措置等を調整する仕組みとなっています。このため、規制改革の実現には多大な労力と時間を要します。これに対し、国家戦略特区においては、国家戦略にふさわしいプロジェクトに必要な規制改革のパッケージを事前に用意した上で、地域を指定し、国、地方自治体、民間事業者が密接に連携をとって区域計画を策定することとしています。〉  

政府の産業競争力会議で成長戦略(アベノミクス第三の矢)を議論する中で、国家戦略特区を提案した竹中平蔵慶応大学教授は、次のようにわかりやすく述べている。

国家戦略特区の枠組みは、今までのものと根本的に違います。今までの特区は、東京都なら東京都、養父市なら養父市が国に「こういう規制緩和をしてください」とお願いし、国が上から目線で「これはやっていい」「これはやってはダメ」と決めるものでした。今度は、養父市なら養父市の区域会議を作って、そこに国の代表の特区担当大臣、地方の代表の養父市長、民間の代表が入る。区域会議が、さながらミニ独立政府のように、自由にものを決められる仕組みなのです。 (2014年4月19日シンポジウム「養父市の挑戦、国家戦略特区で日本の農業はどう変わるか?」)http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39195  

2-3、国家戦略特区のイメージ  

国家戦略特区は、容積率・用途等土地利用規制の見直し、エリアマネジメントの民間開放(道路占用基準の緩和)、雇用条件の明確化、農業委員会と市町村の事務分担などがあげられている。新聞等の報道で伝えられているので、大体のところはご存知のことと思う。以下のウェブで具体的に開示されている。 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc_wg/pdf/h25_kettei_image.pdf

 

2-4、会議を通じて追加された規制緩和策  

第9回国家戦略特別区域諮問会議(H26.10.10)において、「規制改革メニュー」が追加された。安倍首相は、会議の最後に議長としてあいさつし、関係各位への謝意と追加された規制改革メニューについて要約している。

(安倍首相)本日、民間有識者の皆様や関係大臣の協力により、国家戦略特区における「追加の規制改革メニュー」を取りまとめることができました。

具体的には、医師以外でも、経営マインドを持っている方が、医療法人のトップに就ける道を大きく開いてまいります。([第8回諮問会議]医療法人の理事長は原則として医師、歯科医師に限定されており、医療法人数約5万法人のうち、医師等以外が理事長の法人はわずか0.8%の約400法人にすぎない。)

新たに会社を起こす方の各種手続が、一か所で処理できる「ワンストップセンター」を 作ります。シルバー人材センターで派遣される高齢者は、これまでは、週20時間しか働けませんでしたが、40時間働けるようにいたします。 これまで全国一律だった保育士試験に加え、保育士不足に悩む自治体独自の「地域限定の保育士」資格を創設いたします(保育士不足の解消のために、各都道府県は今、1回しか保育士試験をやっておりませんが、2回目を促し、地域限定の保育士制度を創設する。) 今回のメニューは、やる気のある自治体や民間企業からの「真の事業ニーズ」をくみ取ったものであります。これにより、岩盤規制分野にも更なる突破口が開き、新たな産業や雇用が創出されると確信しております。

労働市場の流動性については、会議の中で次のような検討もなされている。

(西村内閣府副大臣)今回の特区でスタートアップ企業に行くケースは、一旦公務員をやめて、戻ることを前提とせず、仮に戻ってもその期間の退職金は通算しない。コンセッションの場合は、空港運営会社、民間に行きますけれども、これはその期間も退職金は通算するし、まだ戻るという前提でやります。

(竹中議員) コンセッション、インフラの運営権を民間に売却するということで、仙台空港がその先駆になりますけれども、それについてやろうと思ったらしかし、管制塔とかそういう周りの仕事を民間はやったことがないわけで、やはり一定期間、公務員に出向してもらわなければいけない。ところが、公務員が民間企業のために出向するというのは制約があるわけで、それをどうするかという、一見小さいようで、非常に重要な問題を整理していたのですが、これは西村副大臣に最終的に調整をしていただいて、この公務員派遣について法的な措置をとるというところまでこぎつけています。

(内閣府地域活性化推進室長)秋田県仙北市等からの御提案を受けまして、国有林野の民間貸付の使用の拡大ということで、民有林の経営規模の拡大を初めまして、地域の産業振興を図ろうとするものでございます。 一番下は全国措置でございますが、養父市の醸造業者さんから御提言を受けまして、インターネットによる酒類販売の今、いろいろ要件がございますが、その要件緩和を図ろうという全国措置でございます。  

追加された規制改革事項について、首相官邸のウェブサイトをあげておく。 国家戦略特区における追加の規制改革事項等について (平成26年10月10日 第9回国家戦略特別区域諮問会議) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/kokusentoc/pdf/h261010.pdf

2014年10月31日には、石破国家戦略特区担当大臣が提唱されていた「地方創生コンシェルジュ」制度を公表している。地方公共団体が、地方版総合戦略の策定を含め地域の地方創生の取り組みを行うにあたり、国が相談窓口を設け積極的に支援するための体制として、国の職員等による「地方創生コンシェルジュ」の仕組みを構築するとしている。 地方公共団体に、制度の公表・選任を希望する市町村等をする公募一方、関係府省庁において意欲のある人に手を挙げてもらい、その応募を受けて各府省庁 が選任する。選定・研修を経て、平成27年1月末に名簿を公表するとなっている。 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tiiki/concierge/gaiyou.pdf  

短期間ではあったが着実に国家戦略特区制度の検討は進展している。まだ具体的な姿が見えないので、国民にはわかりづらいだけである。

国家戦略特区制度は順調に進展している。(1)特区制度の整理

 

 

「国家戦略特区」は、「日本再興戦略 -JAPAN is BACK-」(H25.6.14 閣議決定)において創設が決定した。国家戦略特区制度は、日本経済社会の風景を変える大胆な規制・制度改革を実行していくための突破口として、「居住環境を含め、世界と戦える国際都市の形成」、「医療等の国際的イノベーション拠点整備」といった観点から、特例的な措置を組み合わせて講じ、世界で一番ビジネスがしやすい環境を創出することを目的としている。平成251018日に開催された第10回日本経済再生本部では、国家戦略特区について議論され、「国家戦略特区における規制改革事項等の検討方針」が決定された。

 

 

 

国民の間では、国家戦略特区制度は規制緩和の切り札のように受け止められていると思う。多くの人にとって、どのように進展しているのか、関心が高いのではないか。私も、会議でどのような議論がなされ、どのような方針が出されているのか、興味があった。その結果わかったことは、精力的に実によく検討されているということであり、規制緩和の突破口になり、十分日本の構造改革を推し進める起爆剤になるという確信であった。まだまだ始まったばかりの制度なので、目に見える形にまでなっていないが、この制度を通して日本を再生に導くべく国民が一致団結することが重要であるように感じた。

 

 

 

国家戦略特区は、翌2014328日に国家戦略特別区域諮問会議(第4回)において、6か所の国家戦略特区の指定区域・内容が決定された。その後、精力的に検討が進められ、6か所の特区の国家戦略特別区域会議は、1026日に開催された沖縄国家戦略特別区域会議をもって、すべてで第1回目の会合を終えた。開催が遅れていた東京圏も101日に開催されている。会議の中で協議・作成された区域計画も関西圏(H26.9.30認定)、養父市(H26.9.9認定)、福岡市(H26.9.9及びH26.9.30認定)において決定している。いよいよ具体的に動き出そうかという重要な時期に差し掛かっている。

 

 

 

 

国家戦略特区制度の進展状況について論じる前に、これまで政府が実施してきた特区制度について整理しておきたい。

 

 (1) 日本の特区制度

 

 

 

特区制度としては、2002(平成14)年に創設された「構造改革特区制度」、20116月に創設された「総合特区制度」が記憶にあると思う。この制度は、何れも現在制度として存続している。

 

現在、地域の再生に向けた戦略を一元的に立案し、実行する体制をつくり、有機的総合的に政策を実施していくため、上記の二つの特区制度を始めとした地域関連の施策を「地域活性化統合事務局」がまとめて対応している。
 地域活性化統合事務局では、①都市機能の増進による地域活性化施策(都市再生、中心市街地活性化)、②規制改革を軸に据えた地域活性化施策(国家戦略特区、総合特区、構造改革特区)、③その他の特定政策課題への対応(地域再生、環境未来都市、環境モデル都市、産業遺産の世界遺産登録推進)等に取り組んでいる。

 

 

 

1-1、総合特区制度

 

 

 

産業構造及び国際的な競争条件の変化、急速な少子高齢化の進展等の経済社会情勢の変化に対応して、産業の国際競争力の強化及び地域の活性化に関する施策を総合的かつ集中的に推進することにより、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展を図ることを目的とする包括的かつ先駆的なチャレンジに対し、規制の特例措置、税制・財政・金融上の支援措置などにより総合的に支援する制度である。総合特区には、国際戦略総合特区と地域活性化総合特区の外に復興特区が創設された。

 

 

 

(国際戦略総合特区

 

産業の国際競争力の強化に資する事業を実施することにより、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展に相当程度寄与することが見込まれること

 

2011(平成23)年1222日に7地区が指定された。

 

 北海道フードコンプレックス国際戦略総合特区

 

 つくば国際戦略総合特区~つくばにおける科学技術の集積を活用したライフイノベーション・グリーンイノベーションの推進

 

 アジアヘッドクォーター特区(東京都)

 

 京浜臨海部ライフイノベーション国際戦略総合特区(神奈川県、横浜市、川崎市)

 

 アジアNo.1航空宇宙産業クラスター形成特区(中京地域)

 

 関西イノベーション国際戦略総合特区(京都府、京都市、大阪府、大阪市、兵庫県、神戸市)

 

 グリーンアジア国際戦略総合特区(福岡県、北九州市、福岡市)

 

 

 

(地域活性化総合特区

 

地域の活性化に資する事業を実施することにより、我が国の経済社会の活力の向上及び持続的発展に相当程度寄与することが見込まれること

 

第一次指定平成231222日 26地区

 

第二次指定平成24725日 6地区

 

第三次指定平成25215日 5地区

 

第四次指定平成25913日 4地区

 

 

 

1-2、構造改革特区

 

 

 

構造改革特区制度は、実情に合わなくなった国の規制について、地域を限定して改革することにより、構造改革を進め、地域を活性化させることを目的として平成14(2002)年度に創設された。
地域の自然的、経済的、社会的諸条件等を活かした地域の活性化を実現する
構造改革特区は、平成15年から34回の認定によって、361の構造特区が認定されている。

 

どぶろく特区、野山羊特区、リキュール特区、安心安全給食特区、ワインづくり特区、物流特区、ツーリズム特区、臨時保育士任用期間延長特区、温泉熱利用発電特区、支え合う福祉特区、里山活性化特区、コンビナート活性化特区、みなと経済特区、先端医療産業特区(神戸市ポートアイランド地区ほか)など。

 

 

 

1-3、地域再生制度

 

 

 

地方公共団体が行う自主的・自立的な取組(地域再生計画)を支援。

 

特に、全国共通の重要な政策課題(特定政策課題)の解決に取り組む場合は、重点的に支援*。地域再生計画(これまでに1,692件を認定)

 

 

 

1-4、中心市街地活性化

 

 

 

中心市街地における都市機能の増進及び経済活力の向上を総合的かつ一体的に推進するため、中心市街地活性化の推進に関する法律(平成10630日法律第92号)に基づき、市町村が策定した中心市街地活性化基本計画を内閣総理大臣が認定を行う制度です。

 

認定基本計画への重点的な支援として①市街地の整備改善、②都市福利施設の整備、③まちなか居住の推進、④経済活力の向上を掲げている。

 

 

 

1-5、都市再生

 

 

 

環境、防災、国際化等の観点から都市の再生を目指す21世紀型都市再生プロジェクトの推進や土地の有効利用等都市の再生に関する施策を総合的かつ強力に推進するため、平成1358日、閣議決定により内閣に都市再生本部が設置された。平成14年の都市再生特別措置法制定以降、同法に基づく都市再生緊急整備地域及び特定都市再生緊急整備地域において、都市再生特別地区制度による規制緩和措置や民間都市再生事業計画制度に係る金融支援・税制支援措置等を講じ、都市開発事業を推進しています。

 

《都市再生基本方針》

 

1、 民間の活力を中心とした都市再生― 都市再生緊急整備地域(政令で指定:62地域8,037ha

 

2、官民の公共公益施設整備等による全国都市再生

 

3、土地利用誘導等によるコンパクトシティの推進

 

 

 

1-6、環境モデル都市・環境未来都市

 

 

 

世界的に進む都市化を見据え、持続可能な経済社会システムを実現する都市・地域づくりを目指す「環境未来都市」構想を進めている。
環境モデル都市は、持続可能な低炭素社会の実現に向け高い目標を掲げて先駆的な取組にチャレンジする都市で、目指すべき低炭素社会の姿を具体的に示し、「環境未来都市」構想の基盤を支えている。(
平成20年度に13都市、平成24年度に7都市、平成25年度に3都市の合計23都市を選定)

 

環境未来都市は、環境や高齢化など人類共通の課題に対応し、環境、社会、経済の三つの価値を創造することで「誰もが暮らしたいまち」「誰もが活力あるまち」の実現を目指す、先導的プロジェクトに取り組んでいる都市・地域です。(平成23年度に11都市・地域を選定)

 

 

 

これらの関連施策が有機的に結びついて展開することになる。

 

2014年11月13日 (木)

【報道より】「米農務省報告書ーTPP加盟による2025年予測」

日本農業新聞は、2014年11月13日公表された「米農務省の報告書ーTPP加盟による2025年予測」を伝えている。TPP交渉が大詰めを迎えている中で明らかにされた米農務省の報告書の目的は、日本が農産物の関税撤廃を促すことにあるようだ。日本農業新聞の記事より転載する。

米農務省は、環太平洋経済連携協定(TPP)合意で2025年までに関税が完全撤廃になった場合、交渉参加12カ国の農産物貿易がどう変わるのかを予測した報告書をまとめた。合意によって米国農業は輸出額を最も増やす。一方、参加国全体の輸出増加額の70%は、その輸出先となる日本に押し付けられ、日本農業がほぼ一人負けになると見込んでいる。

 ≪ポイント≫

 1、TPP参加12ヵ国の農産物の輸出額は、計85億ドル増える。

 2、米国の輸出額は28億ドル増。参加国全体の輸出増額分の33%を占める。

 3、日本は、参加国からの輸入額が58億ドル増。

 4、日本の輸入増加率の高い品目は、米・砂糖・内臓肉など。増加額の大きい品目は、牛・羊肉、加工食品、飼料、鶏肉など。

 5、食肉輸出を増やすのは、オーストラリア、米国などで、参加国全体の4分の3が日本向けに輸出。

 6、農業生産額が減るのは、日本とベトナム。日本の農業生産額で減少幅が大きいと見るのは、酪農、小麦、牛肉。

 報告書が示す日本農業への影響は、これまで日本政府などが試算したものに比べ、極めて小さい数字に抑えられている。例えば米について、日本政府が32%の生産額の減少を見込むのに対し、米農務省試算は3%減に過ぎない。砂糖の生産額は100%無くなるとの予測に対し、わずか2%の落ち込みと見込む。

こうした“軽い”減産予測を基に報告書は「TPPで関税を撤廃しても日本農業生産額への影響は大きくない」などと指摘。TPP交渉で日本が関税撤廃に踏み切るよう背中を押した。

TPP交渉の首脳会合は11月10日北京の米国大使館で開かれ、できる限りの早期の妥結を各国の閣僚や交渉官に支持するという首脳声明を採択して終えた。しかし、妥結の目標時期は示さす、交渉は越年が決まった。安倍首相は、「いよいよ最終局面が見えて来た」と力強く語ったが、農産物の関税撤廃についてはいかなる戦略で臨んでいるのか、安易な妥協は墓穴を掘ることを肝に銘じてほしい。

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