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2010年8月19日 (木)

40年周期説と国家戦略

1年前、3回にわたって近代日本史を支配する40年周期説についてブログを書いてきた。この周期説は、春夏秋冬の季節の変化のように日本の時間軸のリズムを形成している。周期説に基づけば、現在は1985年の繁栄の頂点から衰退に入って25年目、衰退期の半分を過ぎた時点にあたる。あと15年の衰退期をどのように克服するか、それが重要な問題である。このことを考えると、あと15年我慢すれば上昇の時期を迎えるというだけに考えがちであるが、これは誤りである。周期には右肩上がりの周期もあれば、右肩下がりの周期もある。衰退期にどのように対処するかによって、衰退の極相は変わるのであり、次の上昇期の様相も変わってくる。今は、次の上昇期に向けて衰退を最小限に抑えて上昇期の準備に備えるべきである。1945年からの発展期の基礎は、第二次世界大戦期の国家総動員令下で作られた制度に負うことが大きい。国家戦略は、この40年周期説を意識した中で立案することが必要である。

日本が40年周期というバイオリズムの中で躍動していることを意識した場合、現在の経済状況にいかに立ち向かうかが当面の課題である。

国際通貨基金(IMF)によると、2010年の日米欧の需給ギャップはマイナス1兆ドル(約86兆円)に及ぶという。8月6日発表の米国7月の雇用統計によると、非農業部門の雇用者数は13万1000人減と依然雇用の回復が遅れている。失業率は、9.5%で変わらずの状況にある。米国経済の回復の遅れに対して、バーナンキFRB議長が「将来にわたる不確実性が異例なほど高い」と明言したことは、米国経済が長いトンネルに入ったことを示唆しているようでもある。ハーバード大学のロゴフ教授は、「米国の本格的な景気回復は、過剰な借金を圧縮し終わるまでは望めない。家計の負債は減り始めたとはいえまだGDPの92%、持続可能なレベルに下がるのは、6~8年後と予想される」と述べている。このことは、雇用環境が改善しないことを意味しており、移民に対して厳しい目が注がれる結果となっている。米国では、不法移民法案が成立した。欧州でもイスラム系の移民に厳しい目が注がれている。国際労働機関(ILO)は、8月12日25歳未満の世界平均失業率が年末には13.1%に達し2005年以来の高水準になると推定している。経済危機の影響が若年層にしわ寄せされている実情が数字となって現れている。

このような経済状況は、80年前と同じ経済のブロック化の動きとなって現れている。欧米各国だけでなく、中国・韓国・インドなどの新興国まで市場の囲い込み(旧植民地への接近)、資源・農地の争奪戦、二国間の自由貿易協定締結による市場確保、官民あげての受注競争、自国通貨の引き下げ競争、法人税引き下げ競争、移民排除政策の実施と、なりふりかまわぬ姿勢が目立っている。政府は、自由主義経済の調停役であるという表面上の立場は捨てて、民間と一つになって営業活動をするようになっている。調停役不在という恐ろしい現実がすぐそこまで来ている。

「史上三度目の恐慌の初期段階にあるのではないか。一度目は、1873年から23年間続いた大不況。二度目は、1929年の大恐慌に始まり第二次世界大戦の戦争特需までの大不況。(プリンストン大学クルーグマン教授)」という指摘は、的を射ている可能性が高い。今回救いなのは、アジア各国が順調に経済成長しているという現実である。しかし、その中心の中国の成長も一本調子にはいかないであろうし、各国がその需要を狙っていることを考えると過大な期待は禁物である。

このような中で、80年前の失敗を繰り返さないためには、「世界の中で孤立しない」という基本線を守ることが重要である。戦前、日本は取り立てて不条理なことをしたわけではないが、世界の中で孤立したことが最大の敗北であった。国家戦略を考えるにあたって、日本一国の利害という視点だけでなく、他の国との協調をいかに図るかに焦点をあてることが肝要である。8月16日の日経新聞は、「政府が政府開発援助(ODA)で、韓国やブラジルなど新興の支援国との連携に乗り出す。9月にもアフリカ東海岸モザンビークで日韓初の協調融資を実施、ブラジルとは農業支援に取り組む。・・・」と報道したが、このような政策は孤立化を防ぎ、信頼関係を築く歓迎すべき政策である。他の国を競争相手とだけ見るのではなく、協力関係を築くことによって得られるメリットを勘案すべきである。東アジア共同体構想についても、信頼関係を醸成することに努めること。日本の一国勝ちも一国負けも危険であると肝に銘じないといけない。

もう一つ当面の課題として考えておかなければならないことは、経済状況がもう一段悪化した場合に対する備えである。不況の深刻化と若年層を中心とした失業率の高まりは、政治的緊張を生み、強硬な政治勢力の台頭を許しかねない事態となる。80年前のナチスの台頭は第二次世界大戦までの世界情勢を記すに至ったが、現在その危険が去ったとは言い難い。日本の右翼団体がドイツの右翼団体を招いて靖国神社に参拝したことが報道されていたが、大衆の理性が切れた時、事態は収拾不能になるであろう。折りしも、北朝鮮は経済の苦境にもめげず国威発揚に努めている。2012年を「強盛大国」の門が開く年と位置づけている。ただのスローガンではなく、具体的な戦略を練っていることであろう。この動きを軽視してはならない。重大な事態を招くことを心しないといけない。

不安要素はまだまだある。世界の温暖化現象は、いつ食糧危機を引き起こすか予断を許さない。そして、いつ起きても不思議でないといわれ続けている東南海地震。経済の悪化を引き起こす要因に神経を尖らさないといけない。

このように外部環境が安定しない中では、外部環境に左右されない国内戦略を着々と進めて社会情勢を安定することが必要である。2026年後を目指して来るべき日本社会のビジョンを創造することが必要である。「均衡と持続性ある社会の創造」をどのように築くか、このことに衷心して邁進すべきである。

団塊世代(1947年 - 1949年生まれ)が後期高齢者(75歳以上)となる2030年頃までは、高齢者数が急激に増加し、特に後期高齢者数は2005年の約2倍に増加する。しかし、塊ジュニア世代(1971年 - 1974年生まれ)が現役でいることから、生産年齢人口は約60%弱と大幅に減少するものの高齢化率は約30%強に留まる。その後は、高齢者数はほぼ横ばいに推移する。少子化の影響は、2016年以降世帯数の減少となって表れ、2030年には4880万世帯と4%減る見通しである。

2026年までの苦しい時期こそ、来るべき社会の姿を模索する試練の時であり、よきチャンスでもある。私も、家族主義経済、贈与主義経済、農業振興、社会保障などこのブログでその方向性の一端を示唆したが、ビジョンの具体的な姿を模索することが未来にとって肝要である。

関連ブログ 

2009年2月5日 日本近代史を支配する40年周期説-2025年日本崩壊説は無視できない

2009年10月15日 40年周期説から考える東アジア共同体構想

2009年11月7日 深刻化するデフレにいかに立ち向かうか(40年周期説より)

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