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2017年2月18日 (土)

トランプ旋風の歴史的意味 (1)トランプ大統領は、扇動家ではあっても破壊主義者でも孤立主義者でもない

トランプ旋風とは、既成の権力構造・既得権に対する大衆の反旗である。革命という形をとっていないが、既成の権力構造に対する決定的な否定である。それは、既成の指導者による国際協調、グローバリズムという政治経済路線が失敗したことを意味する。

 

昨年暮れ、このブログで、2016年をふりかえって―まさかの連続が意味すること―第二次世界大戦の起点とされる1937年から80年目を迎えるに際して(40年周期説)」(2016/12/28において、「2016年は、希望がみられる年になるどころか混迷が深まるだけになってしまった。まさかという事態が続く異例の展開になってしまった。歴史は暗転したといってもいいだろう来る2017年は、第二次世界大戦の始まりの年といわれている1937年から80年目にあたる。80年前の1937年は、米国のFRBが金融引き締めに転じて「ルーズベルト不況」と称された大不況に陥り株価が暴落し、軍事支出に頼る戦時経済に打開策を見出すという最悪の展開になった年である。折しも来年、欧州ではフランスの大統領選挙、ドイツの議会選挙がある。どんなリーダーが表舞台に出てくるか、予断を許さない」と記した。

時代の新しい担い手は、一国中心主義・移民反対を唱える右派急進勢力に移ったのである。新しい担い手である右派急進勢力が、過激な言動によって世界を混乱に導くかまたその思想に内在する正当性を楯に世界を再創造に導くかは指導者が賢明であるか否かにかかっている。かつて第二次世界大戦前にはヒトラーが登場し、世界は戦争に突き進んだ。果たして今回は、・・・・・・。 

トランプ大統領はこのような中で登場し、破天荒な言動で世界を混乱に陥れているのである。トランプ大統領は大衆に擦り寄るポピュリズム政治家に過ぎないのか、それとも時代を切り開き新しい世界を築くのか、歴史は重要な分岐点にきたのである。

 

「アメリカファースト」という代名詞で語られるトランプ大統領の過激な発言の数々は、世界中を不安に陥れてきた。このままでは国際協調は台なしになり、世界は深刻な対立に陥るのではないか。世界のリーダーとしての米国の役割を放棄するとすれば、世界は混乱に陥り戦争の危機に向かうのではないかと畏れられた。

しかし、119日の大統領就任から1か月経ち、その懸念は薄らいできた。過激な発言の数々は、相手にジャブをかませ国民を扇動するためのものであり、実際は落としどころを見据えたもののようだ。

 

自由な国米国の病める姿に対して発せられている発言の数々は、国民の共感を呼び起こすものである。国民の中には、難民は病気と犯罪をもたらす。移民や外国人は、雇用を奪う。不法移民の子供は、米国人の税金を使って義務教育を受けている。不法移民や外国人は、税金が使われた社会インフラや社会福祉の恩恵を受けている。白人ばかりのマンションに住むアジア人ジャーナリストは、その安全性を利用し、享受している」という不満が渦巻いている。

The Huffington Post  | 執筆者: 津山恵子 【それでもトランプ大統領は負けない。なぜなら...

 

「イスラム過激派のテロを打倒し、米国内に根を張らないようにする」と発言し、イスラム圏7か国からの入国を禁止する大統領令を発布したのもそのような理由による。その7カ国は、イラン、イラク、リビア、ソマリア、スーダン、シリア、イエメンという治安の悪いイスラム過激派の活動の激しい国々である。しかし、過激派を最も輩出しているサウジアラビアは対象となっていない(サウジとトランプ氏とはビジネス上の関係があるようだ)。

この大統領令について、国民は「強く支持する」と「ある程度支持する」との回答は計49 %。「強く反対する」と「ある程度反対する」は計41%というように、国民を扇動する上では大きな効果を発揮している。そして実際には、グリーンカード保有者などの合法的な永住権取得者については大統領令の対象外にしたり、行き過ぎと見た大統領令効力は、裁判所が一時差し止めたように現実的な線で落ち着きを図っている。

 中国政策についても同様である。トランプ大統領は、就任前台湾の 英文総統と電話会談を行い、中国の不興を買った。それだけでなく、トランプ大統領は「日本は在日米軍の駐留経費を全額負担すべきだ」「日本や韓国から米軍を撤退させるべきだ」など、アメリカ第一で世界平和に対する軍事的貢献を拒否するかの発言を繰り返していた。この動きを、中国は高笑いしながら見続けていた。

中国のインターネットやSNS上にはトランプ政権が発足して以降連日、このような「特朗普」(トランプ)を評する様々な「声」が載っている。

習近平政権や中国のインテリ層にとって、「アメリカの混乱と自壊」が、愉快でたまらないのである。

24日付『環球時報』 トランプの移民政策がシリコンバレー恐慌を起こす 科学技術の人材は北上しカナダへ移住

24日『地球外参』 春節後にアメリカとEUの夫婦が離婚の危機に

25日付『新華社』 国民が望まないトランプの「3本の斧」国境の壁造り、入国制限措置、オバマケアの廃止とNAFTA(北米自由貿易協定)の見直し……。

中国にとってはトランプ政権が、中国経済を崩壊させかねないことが最大のリスクなのである。(近藤大介)

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/50922

 

しかしそれも実際には、側近のアドバイスを受け入れ、「米国は偉大な同盟国、日本を100%支持する」と明言し、尖閣諸島も日米安全保障の範囲であると述べ、米国の太平洋地域での軍事的役割を明確にした。また、29日には中国の習近平国家主席と電話会談し、「一つの中国」の原則を尊重すると伝えるなど、落ち着いたところの政策は、以前とほとんど変わらないものとなっている。落としどころはわきまえているのだ。いや、より強烈なメッセージを発したといっていいであろう。

 

トランプ大統領が建造を主張しているアメリカメキシコ間の国境を閉ざす壁の建設についても、どこまで本気か定かではない。国土安全保障省が作成した報告書によると、「費用は最大で216億ドル(約24,500億円)になり、工期は最低3年を要する」。アメリカ・メキシコ間の国境線は約3,000キロメートルだが、両国の国境の壁は、オバマ政権以前にも作られており、約1,000キロには既に壁などが存在する。トランプ大統領の主張は、残りの2,000キロにも壁やフェンスを作る、というものである。トランプ大統領は壁を建造する理由について「不法移民の流入を防ぐためだ」としている。現在、両国間の国境にはトンネルを掘って麻薬の密輸入が行われるなど問題が多いことははっきりしている。しかし、それをどのように進めるのか、おそらくどこかに落としどころを定めているはずである。

 

2月3日には、2010年に成立した金融規制改革法(ドッド・フランク法)を見直すための大統領令に署名した。この署名には、ウォール街が盛り上がった。しかしこの大統領令も具体性に乏しい上、規制緩和は民主党の猛反発に遭いそうで、肩透かしの変更に終わりそうである。というのも、ドッド・フランク法に大きな変更を加えることができるのは、同法を成立させた議会だけだからだ。大半の変更には上院議員60人の賛成が必要になるが、共和党はそれに8議席足りない。どこまで本気か定かではない。

 

このように、トランプ大統領はジャブをかましながら政策を誘導して落としどころを探っているのだ。しかし、トランプ大統領はただの扇動家ではない。確固たる一つのポリシー・信念を持っている。米国の復活は、額に汗して働く労働者によって築かれるという開拓の精神である。

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