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2017年3月13日 (月)

トランプ旋風の歴史的意味 (3)40年周期説から見た同時性の時代(1)

 トランプ大統領の政策は、1980年代のレーガン政権のレーガノミクスにダブらせて見られている。大型減税、軍事増強、インフラ投資などその主張はレーガン政権と類似している。今後世界は、どんな展開をしていくのであろうか。

 私は、現代歴史は40年周期で動いていると指摘してきた。第118651905、第219061945、第319461985、第419862025である。この見地からトランプ大統領の登場をみると、唐突でも意外なものでもない。現代歴史の同時性を踏襲していることがわかる。

 その同時性の歴史とは、①第二次世界大戦期1937年~1945年、②レーガノミクス1981年~1988年、③トランプ政権以降2017年~2025年、である。(期間のずれは、歴史の重要な事件が起きるタイミングが制度などによって規定されていることがあるためずれが起きてしまう。)過去の二つの時期の展開を比較しながら、トランプ政権の未来を展望してみたい。併せて、日本がどのような歴史をたどるのかを推測してみたい。下に米国の第二次世界大戦期、レーガノミクス期のGDPの成長率と寄与度(GDPの構成要因)を掲げておく。

 

1930年〜1946年におけるアメリカの実質GDP成長率の寄与度分解
世界恐慌からルーズベルト大統領就任の1933年までマイナス成長を続け、ルーズベルトのニュー・ディール政策により1937年まではプラス成長を続けたが、1937年5月〜1938年6月までの恐慌によりマイナス成長にいったん転じた。第二次世界大戦の勃発に伴い、軍需の増大から政府支出(グラフ紫色表示)が増加し、アメリカ経済を牽引した。戦争が終わると実質GDP成長率はマイナスに転じている。

1974年〜1990年におけるアメリカの実質GDP成長率の寄与度分解
レーガン政権下における双子の赤字(財政出動(グラフ紫色表示、プラスに寄与)・純輸出(グラフ黄色表示、貿易赤字のためにマイナスに寄与))は寄与度分解でもはっきりと表れている。

(1)第二次世界大戦期<19371945年期> 

期間前の情勢

 

米国では、既にF.ルーズベルトが大統領のもとに、ニュー・ディール政策が実施されていた。最悪期は脱し、1935年には失業者の生活保護から大量雇用を中心とする第二次ニュー・ディール政策に政策は移行していた。経済は順調に回復し、アメリカの鉱工業生産は1929年の水準にまで回復を遂げていた。物価はインフレ傾向にあり、そのことを警戒したFRBは金融引き締めに転じ、1936年8月から19373月かけて預金準備率を32倍に引き上げた。また、米国政府の債務残高はGDP40%という前代未聞の水準に達していた。

 

国際情勢においては、日本が1932年満州国を建国、1933年には国際連盟を脱退する。満州を経済圏として得た日本のGDPは、1934年に恐慌前の水準に戻っていた。翌1935年には、戦前日本経済・消費が最高度に達したといわれた。1940年には鉱工業生産・国民所得が恐慌前の2倍以上となっていく。米国でも未来に対する楽観的な雰囲気が支配していていた。世相は、暗くなかったのである。

金融引き締め期(1937~1938)

19368月からのFRBの金融引き締めと19371938年の財政均衡政策は、順調に回復してきていた経済に異変を起こす。1937年下期に入って経済が急減速しマイナス成長に陥る。FRBの金融引き締めと政府の財政均衡政策-1936年の所得税率引き上げ、19371月の社会保障税の導入、1937年の財政支出大幅削減予算-により1938年は不況になり、実質GDP11%下がる。失業率は4%上昇し、「ルーズベルト不況」と呼ばれることになる。その一方で、1936-38年にはGDP5.5%の財政赤字を解消する。

 

(ダグラス・アーウィンは、財務省が金の流入を徹底的に不胎化する決定を行い、それが原因でマネーサプライの伸びに急ブレーキがかかることになったと主張している。)
金の不胎化一国に金が多量に流入すると,通貨増発をもたらし,経済にインフレ的影響を与える。この影響を防止するための政策をいう。たとえば1936年末,米国は流入する金を不活動資金として凍結し,金購入の代金として通貨の代りに財務省証券を交付した。

 

株価は19373月高値194ドルから19383月にかけて50%以上急落した。1937年高値の194ドルを回復したのは1945128日のことである。1937年の亡霊」といわれ、これがこの23年FRBが金利引き上げに慎重になっている理由である。

 

国際情勢に目を転ずると、193777盧溝橋事件が起こり、1945年までの日中戦争がはじまる。8月には上海事件が起こり、中国大陸は戦乱の舞台となっていった。ナチスドイツは、1938年にオーストリアを併合し1939年にはポーランドに侵攻し、第二次世界大戦が勃発する。

 

●順調な安定成長期(1939~1945)

 

この時期の経済は戦争経済である。第二次世界大戦の勃発を受けて、米国は軍事支出の増強を図る。この結果、戦争経済による好景気が1945年まで続くことになる。太平洋戦争が起こり、連邦政府は見境のない財政支出を開始し、また国民も戦費国債の購入で積極財政を強力に支援した。1943年には赤字が30%を超えたが失業率は急低下し1941年の9.1%から19431945年の平均で労働力の2%以下にまでなり、1945年には1.2%にまで低下した。GDPは、1939年から1945年にかけて88%増大した。600万人もの女性が加工生産分野の職に就いた。労働者の実質賃金も39年から45年までに27%上昇した。戦争という特殊な状況下であったため、コストプラス利益保証、奨励金付きの賃金という助成策もとられた。

 

この時期の物価は、価格管理局が住居の賃貸料を統制し、砂糖からガソリンまでの消費財を配給し、他にも価格上昇を抑えるように努めたため、インフレは抑えられた。

 

副作用とその対処

 

副作用は終戦後起きたが、米国の場合軽微であった。FRBが戦時国債を買い支え、終戦時保有残高は国民総生産10.6%にのぼったものの、戦争遂行費用は国債にのみ頼ってなく正常な財政支出でも賄っていたためである。1945年のGDPは、16,466.9億ドル前年比-4.2%に落ち込んだ。インフレ率をみると、1940年を100として、1945年は128.628,6%上昇、1955年には191.4である。1945年を100にすると、1955年には148.948.9%上昇であった他の戦争当事国に比べ、圧倒的にインフレ率が低かった。

 

戦後はブレトン・ウッズ協定が発効し、基軸通貨としてのドルが不足しがちとなり、資金流出を止めるために金利は高止まりした。また、戦争終結により軍需生産が終了したため、雇用創出が急がれた。1946年には雇用促進法によって大統領経済諮問委員会が設立され、政策は軍需を創出する方向へ向いていく。19473月にトルーマン・ドクトリンが出され、6月にはマーシャル・プランが提唱されていく。戦後が始まるのである。

 

日本への影響

 

日本は米国に先立って1936年の二・二六事件以降戦争経済に入っていく。満州への進出は、日本経済を早期に恐慌より立ち直らせたが、外貨不足は深刻になっていった。1937年の支那事変からはじまる日中戦争、石油禁輸に端を発する米国との戦争は、日本を壊滅に導いていった。日中戦争の始まりによって、日本と米国の関係は険悪になり、1938年には日米通商航海条約が破棄される。米国の態度は1940年の日本の仏印進駐や日独伊三国同盟の締結によりますます硬化し、1941725日には在米日本資産の凍結、8月には「日本を含む全ての侵略国」 への石油禁輸に踏み切ることになる。日本は、米国との太平洋戦争に巻き込まれることになる。そして1945年敗戦、国土は灰塵に帰したのだった。

 

1945年の日本のGDPは、987.1億ドル、前年比―50.0%であった。GDPの対米国比は、193922.7%と戦前最高の値を示したが、1945年には6.0%にまで落ち込んでいた(*1)。消費者物価指数は、194510月から19494月までの36か月の間に約100倍となった。日本銀行の調査によれば、1934-1936年の消費者物価指数を1とした場合、1954年は301.8となった。つまり、8年間で物価が約300倍となったことになる。

 

(*1) Monitoring The World Economy 1820 - 1992 OECD(経済協力開発機構)

拙ブログ2011/7/7米国の1929年大恐慌からの復活をもたらしたもの(米国の世紀)」参照h
ttp://kivitasu.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/1929-4d9c.html

 

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