心と体

2016年3月12日 (土)

6時間以下の睡眠は、徹夜するのと同じだった。

ギズモードジャパンは、2016年3月11日「6時間以下の睡眠は、徹夜するのと同じだった」という記事を掲載しています。睡眠不足が気づかないうちに認識能力を落としているという実験結果です。転載してみます。
http://www.gizmodo.jp/2016/03/post_664250.html
 
睡眠はあなたが想像している以上に大切だったんです。

睡眠時間が異なる参加者を集めて実験が行なわれました。夜しっかり寝るグループ、数時間だけ寝るグループ、そして一睡もしない徹夜グループ。この3グループを比べた結果、なんと数時間しか寝ないのは、徹夜するのと変わらないということがわかりました

ワシントン州立大学の研究チームによっておこなわれた睡眠の実験。参加者にとっては簡単な実験ですよね。寝て、アンケートに答えて、心理テストを受けるだけ。でも、なかなかおもしろい結果が出ました。2週間の間、毎日6時間しか寝なかった人と2日間徹夜をした人とではテスト結果が変わらなかったのです。この研究結果はSleep紙に発表されています。

2週間に及ぶ実験には48人が参加し、「8時間しっかり寝る人」、「4時間寝る人」、「6時間寝る人」でグループ分けされました。このほかに、3日間の実験で「徹夜をし続ける人」のグループを用意。実験中、研究チームは参加者たちの反応時間、脳波のパターンをはかり、最後に彼らにはどんな気分かというアンケートに答えてもらいました。

その結果、睡眠時間が短かった人たちに一番影響が出ました。研究チームによると、「6時間かそれ以下の睡眠時間を続けることで、認識能力が2日間徹夜した人たちと同じレベルまで下がってしまう」ということがわかりました。人間の体は、毎日2時間睡眠が短くなることで、2週間後には48時間起き続けているのと同じ状態になってしまうのです。

参加者のアンケートを見てみるともっと良くないことがわかります。2週間の実験後、毎日6時間の睡眠を取ったチームのテスト結果が一番打撃を受けていました。なぜかというと、被験者たちは自分たちの認知能力が低下していることに気づいていなかったのです。6時間以下の睡眠をしていた人たちは自分たちが2日間徹夜し続けているのと同じような状態でありながら、自分たちはテストでうまくやっていると思っていました。睡眠不足は自分たちの気づかないうちに大きな影響を与えているんです。

そしてその悪い影響は一つだけではないようです。GENETICSに発表された研究によると、実験で、線虫にストレスを与えるために線虫を40度に加熱し、その後VAV-1というタンパク質を作り出せた線虫は眠ることができて、VAV-1を作り出せなかった線虫は眠ることができませんでした。そして、眠れなかった線虫の方が数日後に死んでしまいやすいことがわかりました。研究者チームは、人間にもストレスがあった後にそのような眠りを助けるタンパク質が作られているのではないか、と考えているようです。もしそのタンパク質があるとして、それを出さないようにしてしまった場合、実験の線虫のように、私たちにも想像以上の深刻な事態が起こってしまうかもしれません。

みなさん、大事なプレゼンやテストがあるときは、徹夜して頑張るのではなく、逆に睡眠を十分にとりましょうね。

 

2015年10月19日 (月)

【報道】「アルツハイマー病、原因は真菌感染?患者の脳に痕跡」より

アルツハイマー病に関する興味深い研究が発表された。認知症の増加が心配される中、この研究は突破口を切り開くものになるかも知れない。希望を感じさせるものである。転載した。

【10月16日 AFP】認知症の中でも最も症例が多いアルツハイマー病の患者の脳に、真菌の痕跡を発見したとする研究結果が15日、発表された。これにより、アルツハイマー病の原因は伝染性病原菌なのか、という疑問が再び浮上した。

 研究を行ったスペインのチームは、まだ決定的な証拠は得られていなものの、この問いの答えが「イエス」であることが判明すれば、アルツハイマー病は抗真菌療法による治療の対象となる可能性があると、英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表した研究論文で指摘している。

「アルツハイマー病が真菌性疾患である、または真菌感染がアルツハイマー病のリスク因子である可能性は、患者への効果的な治療に対する新たな展望を開くものだ」とチームは述べている。

 研究者5人からなるチームは、分析対象としたアルツハイマー病患者11人の遺体の全てで、脳組織と脳血管に「数種類の真菌種」の細胞や関連物質を発見した。これらは、アルツハイマー病にかかっていない対照群にはみられなかった。

1か月前のネイチャー誌に掲載された別の研究結果では、アルツハイマー病の「種」が外科手術によって誤って患者から別の患者へと移植されてしまう危険性も指摘されていた。また、研究者の中には、アルツハイマー病が伝染病なのではないか、あるいは、少なくとも特定の細菌への感染が発症リスクを高めているのではないか、との説を唱える者もいた。

 これまでの研究で、ウイルスや細菌に由来する遺伝物質がアルツハイマー病患者の脳内で発見されており、ヘルペスや肺炎を引き起こすウイルスが、アルツハイマー病の「病原体」である可能性が示唆されていたと、今回の論文は指摘している。

アルツハイマー病の「主病因」はこれまで、粘着性タンパク質の蓄積によって形成される脳の「アミロイド斑(プラーク)」とされてきたが、プラークを標的とする薬剤の試験は、期待はずれの結果に終わっている。

 今回の研究結果は、アルツハイマー病の考えられる原因のリストに、新たな仮説を追加するものだ。

数種類の真菌の痕跡が発見されたことで「アルツハイマー病の臨床症状の進行と重症度が患者によって異なることを説明できるかもしれない」と研究チームは述べている。

 また真菌の原因は、病気の進行がゆっくりであることや炎症反応がみられることなどの、アルツハイマー病の特徴とぴたりと符合すると研究チームは補足した。炎症は、真菌類などの感染性病原体に対する免疫反応の一つだ。

 一方で研究チームは、真菌感染症がアルツハイマー病の原因ではなく、アルツハイマー病によって免疫力が低下したり、食生活や衛生環境が変化したりした結果である可能性も認めている。

 論文は「アルツハイマー病の真菌感染の因果作用を立証するための臨床試験が不可欠なのは明白だ」「有効性が極めて高い上にほとんど毒性のない抗真菌薬が、現時点で多数存在する。アルツハイマー病が真菌感染で引き起こされる可能性を調べるための臨床試験を設計するには、製薬業界と臨床医学者らからの協力が必要になる」と記している。(c)AFP/Mariette LE ROUX

http://www.afpbb.com/articles/-/3063366?cx_part=topstory_2

2015年5月 7日 (木)

【報道】「コーヒーや緑茶、1日数杯で長寿効果」より

朝日新聞デジタルは、2015年5月7日【コーヒーや緑茶、1日数杯で長寿効果 19年間追跡調査】と題する記事を載せている。コーヒーは、カフェインによって気分を高めるだけで健康を害するというイメージしかなかったが、明確な効用を持っていることが医学的に実証されたようだ。ポリフェノールが血圧を下げ、カフェインが血管や呼吸器の働きを良くしている可能性があるという。どんな食料も飲料も悪いだけのものはなく、すばらしい効用があるということをよく認識すべきだろう。

コーヒーや緑茶を日常的によく飲んでいる人は、そうでない人に比べて死亡するリスクが低いとする調査結果を、国立がん研究センターなどの研究チームがまとめた。コーヒーに含まれるポリフェノール、緑茶に含まれるカテキンが血圧を下げ、両方に含まれるカフェインが血管や呼吸器の働きをよくしている可能性があるという。

全国に住む40~69歳の男女約9万人に対し、コーヒーや緑茶を1日どれくらい飲むかを、ほかの生活習慣などと合わせて質問し、経過を約19年間追った。この間に約1万3千人が亡くなっていた。

コーヒーや緑茶をよく飲む人は死亡率が低く、コーヒーを1日に3~4杯飲む人ではほとんど飲まない人に比べて、死亡リスクが24%低かった。緑茶は1日1杯未満の人に比べ、1日5杯以上飲む男性で死亡リスクが13%、女性で17%低かった。どちらも、死亡のリスクにかかわる年齢や運動習慣などは影響しないように統計学的に調整した。

ダイヤモンドオンライン「男の健康」で、清野仁與氏が「忙しい人ほどコーヒーブレイクを。 コーヒー、紅茶・緑茶に「脳卒中の予防効果」あり!」という記事を書かれている。かつてコーヒーはどちらというと健康に有害であるというイメージをもたれていたが、近年、糖尿病の予防効果が報告されるなど、むしろ健康に良い飲み物へとイメージチェンジしつつあるそうだ。記事の中から紹介されている二つの研究成果を転載した。http://diamond.jp/articles/-/4764

1つの研究は、8万人以上の女性を24年間も追跡したデータを分析したものです。1日に2~3杯のコーヒーを飲むことで、ほとんど飲まない人と比べて、脳卒中のリスクが2割減少することがわかりました。週に5~7杯でもリスクは12パーセント低下しました。カフェイン抜きコーヒーでもこの脳卒中の予防効果はみられました。

「この効果はコーヒーに含まれるどの成分によるものかは明らかでありませんが、カフェイン以外のポリフェノール類などが良い効果をもたらしているようです」とこの研究をおこなったハーバード大学医学部のロブ・ヴァンダム教授は述べています。

もう1つは、 米国の国家の大規模健康調査からの、コーヒーを飲む習慣をもつ 40歳以上の9384人のデータを分析したものです。カリフォルニア大学ロサンゼルス校のデヴィッド・リベスキンド教授が、米国脳卒中協会の国際コンファレンスで報告しました。

この研究では、毎日6杯以上のコーヒーを飲む人々は、1日に1~2杯のコーヒーを飲む人々と比べて、一過性脳虚血発作(TIA)か脳卒中を起こすリスクが約4割も低下することがわかりました。さらに、コーヒーを飲む習慣には、脳卒中のリスクの低下につながる血管の保護効果もあることが明らかになりました。

一過性脳虚血発作は、ミニ脳卒中とも呼ばれて、実際に小さい脳卒中がおきて、「視野の半分が見えなくなる半盲、どちらか半身のしびれや脱力、ろれつが回らない」などの脳卒中の症状がでますが、数分から数時間あるいは1日程度で消えるものです。一過性脳虚血発作をおこした人は将来、大きい脳卒中をおこすリスクがかなり高くなることがわかっています。

どちらの研究者も、「コーヒーを飲む量が増えるほど、脳卒中のリスクが低下するようだ」と語っています。

コーヒーだけでなく、緑茶や紅茶を飲む習慣も脳卒中のリスクを低下させるという研究結果もあります。

2014年11月23日 (日)

【報道】「女性の喫煙は孫の代まで影響がある」より

ニフティ・ニュースは、2014年9月28日「女性の喫煙は孫の代まで影響がある」という記事を配信している。疫学調査であるが、思っている以上に子供・孫に深刻な影響を与えているといってよいのではないか。

http://news.nifty.com/cs/item/detail/mnwoman-20140928-mw3840724/1.htm

妊娠中の女性が喫煙をやめるべき理由はいろいろ挙げられてきていますが、最近の研究で新たに加えられるべき事実が!?

 母親の喫煙によって、胎児に危険が及ぶだけでなく、その子の子供、つまり孫の成長にも影響を与えるというのです。

14500家族を対象に行われたイギリスの研究データを用い、研究者たちが喫煙習慣のある祖母を持つ子供たちの成長を追いました。

 喫煙者である祖母を持つ男の子に、特に健康影響は見受けられませんでした。

 しかし、母親と祖母両者とも喫煙者である女の子と、母親だけ喫煙者で、祖母は非喫煙者である女の子を比較してみたところ、前者のほうが後者よりも低身長、低体重であることが分かりました。

過去の研究では、ニコチンが胎児の卵巣と精巣に影響を与えるということが確認されています。今回の調査はそれを裏付ける結果となり、さらに、ニコチンが胎児の未来の子供の健康にまで影響を与えることも意味しているのです。

 「子宮内でタバコの煙にさらされた女の子の胎児が、将来子供を持つ場合、その子の喘息のリスクも高くなるであろう」と、クイーンズランド子供医療研究所の副所長であり、小児呼吸器科医であるピーター・スライ博士は述べています。

Smoking in pregnancy affects grandchildren’s health
http://health.ninemsn.com.au/healthnews/8892923/smoking-in-pregnancy-affects-grandchildrens-health

○男性の喫煙率30.3%、女性の喫煙率9.8%(2014年)

日本たばこ産業(JT)は2014年7月30日、国内でタバコを吸う人の割合(喫煙率)が19.7%となり、初めて20%を下回ったと発表している。20%を割り込んだのは1965年の調査開始以来初めてである。

成人男性の平均喫煙率は30.3%でした。 これは、昭和40年以降のピーク時(昭和41年)の 83.7%と比較すると、48年間で53ポイント減少したことになる。 年代別にみると、急激な喫煙率の減少傾向が見られる60歳以上は21.1%で、 ピーク時(昭和41年)より57ポイント減少しました。また、平成26年の喫煙率が一番高い年代は40歳代で38.5%でした。

成人男性の喫煙率は、減少し続けていますが、諸外国と比べると、未だ高い状況にあり、約1500万人が喫煙していると推定される。

これに対し、成人女性の平均喫煙率は9.8%であり、ピーク時(昭和41年)より漸減しているものの、ほぼ横ばいといった状況です。 平成26年の喫煙率が一番高い年代は40歳代の14.8%、最低は60歳以上の6.3%です。(JT全国喫煙者率調査) http://www.health-net.or.jp/tobacco/product/pd090000.html

女性の喫煙について、その問題を福井県健康福祉部健康増進課のウエブより転載します。

http://www.fukui-kenko.net/jyosei/tabacco.html

女性の喫煙がなぜ問題なのか?

健康上の被害も、女性は男性よりも受けやすいと言われています。女性ホルモンの分泌をおさえる、妊娠・分娩に有害な作用を及ぼすからです。

美容の大敵!
肌荒れ・老化が早まる
歯周病・口臭の原因にもなる

月経困難・月経不順・不妊・
子宮外妊娠・早産・流産などの
原因にもなる

女性の喫煙とがんの相対リスク、女性の場合の「がん」リスク
肺がん  3.9倍
              子宮頚がん  2.3倍
              口唇・口腔・咽頭がん  2.0倍
              食道がん  1.9倍
              尿路(膀胱・腎盂・尿管)  1.9倍

また、以下のように女性特有の影響があります。
・骨粗しょう症の危険が高まる
 喫煙による女性ホルモンへの影響で骨量が減ったり閉経が早まり、骨粗しょう症になりやすくなります。            

・胎児・子どもへの悪影響がある
妊娠中の喫煙によって胎児に十分酸素が行き届かず、発育が遅れる、低体重児が生まれるといったリスクが増加。
授乳中の喫煙は赤ちゃんもニコチン中毒にさせてしまうという恐ろしい話も!
喫煙によって不妊になる確率も高まると言われています。

いづれにしても女性の喫煙は、子供のため孫のため控えたほうがいいのではないでしょうか。

2014年11月 5日 (水)

【報道より】シフト制勤務は、加齢を早めて脳機能を低下させる。

AFP=時事は、2014年11月4日「シフト制勤務、脳機能の低下と関連か」と題して、フランスの研究チームがシフト制勤務を10年以上続けている人は、脳の記憶力や認知力が低下する可能性があるとする研究結果を報道した。何となく感じていることだったが、こうして研究結果が出ると、シフト制勤務をしていること自体がやはり激務であるということを再認識する。多くの人がシフト制の勤務をされていると思うが、体に気をつけて頂きたいものである。

【AFP=時事】シフト制勤務を10年以上続けている人は、脳の記憶力や認知力が低下する可能性があるとする研究結果が、4日に英医学誌「Occupational and Environmental Medicine(職業・環境医学)」で発表された。低下した脳機能は回復可能だが、それには少なくとも5年かかる可能性があるという。

体内時計を混乱させるシフト制勤務については、これまでにも潰瘍や循環器疾患、一部のがんと関連が指摘されている。しかし、シフト制勤務が脳に与える可能性がある影響についてはあまり知られてこなかった。

研究チームはフランス南部で1996年、2001年、06年の3回にわたり、さまざまな職業分野の現役労働者、退職者合わせて3000人以上の長期記憶、短期記憶、処理速度、認知能力全般について検査した。被験者は初回検査時の年齢が32歳、42歳、52歳、62歳のいずれかで、うち半数の勤務形態は、夜勤、あるいは朝昼晩を順次交代するシフト制勤務だった。

シフト制勤務のグループとそうでないグループの検査結果の経年変化を比較したところ、シフト制勤務と「慢性的な認知機能障害」に関連性が認められた。この関連性は、シフト制勤務が10年間を超える場合により強く、加齢による衰えの6.5年分が追加された状態に相当するという。

またデータでは「シフト制勤務を止めた後に認知機能が回復するには少なくとも5年かかる」ことが示された。

論文の執筆者たちによれば、認知力低下の原因がシフト制勤務であることは「非常に妥当性がある」ものの、今回の研究では完全に証明できず、さらなる研究が待たれる。

シフト制勤務は心臓発作や冠動脈疾患などのリスクを高めるといわれている。研究成果を併せて紹介しておく。

シフト制で働く人は通常勤務の人と比べると、心臓発作を起こす確率が23パーセント高い。また、狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患になるリスクは24パーセント、脳卒中は5パーセント高かった。

さらに、シフト制勤務のなかでも夜勤をしている人に限ってみると、冠動脈疾患の確率が41パーセントもアップしたそうだ。主な理由としては睡眠不足や運動不足、食生活の乱れなどがあげられるとのこと。しかし、これらの様々な要因を考慮してもシフト制勤務が健康に与えるリスクは非常に大きいという。http://rocketnews24.com/2012/08/02/236321/

2014年7月25日 (金)

「ほめられることは報酬、脳が喜ぶ」定藤規弘教授の研究より

人は、他人からほめられるとうれしくなる。よい評判を聞いたらうれしくなる。子供の教育でも、ほめると育つといわれてきた。このことを脳科学として世界で初めて解明した定藤規弘教授の研究を紹介する。

子供がお母さんに褒められたり、他人から良い評判を聞いたりすると、“心”がうれしくなります。そんなとき、脳の中でいったいどうした反応が起きているのかを、生理学研究所の定藤規弘(さだとう・のりひろ)教授と出馬圭世(いずま・けいせ)大学院生のグループが解明しました。(大学共同利用機関法人 自然科学研究機構 生理学研究所http://www.nips.ac.jp/contents/release/entry/2008/04/post-36.html

研究グループが注目したのは、脳の中の「線条体」と呼ばれる部分。機能的核磁気共鳴機能法(fMRI)を使って男女(平均年齢21歳)の19人に、褒められる状況と、報酬としてお金がもらえる状況の二つの状況をテストして、脳の反応を調べました。すると、他人に褒められると反応する脳の部位は、お金のような報酬をもらえるときに反応する脳の「線条体」と同じ部位であることが明らかとなりました。褒められることが、実際に脳においては「喜び」となり、「報酬」としてとしてお金などと共通に受け取られていることを明らかにした世界で初めての研究成果です。本研究成果は、2008年4月24日づけの米国脳神経科学誌「ニューロン」に掲載されました。

         

【fMRI画像1】 お金を得ると反応する脳の部位

         

【fMR画像2】 他人に褒められると反応する脳の部位

         

【fMRI画像3】 fMRI画像1と画像2を重ね合わせた図

定藤教授が 脳外誌 Vol.23 318-324 2014に発表されている論文「機能的MRIによる社会能力発達における神経基盤の解明」を下記のウエブに掲載されていたので転載する。http://apital.asahi.com/article/kasama/2014071500012.html

 「心の理論の神経基盤は、機能的MRIでよく研究されており、内側前頭前野、後部帯状回、ならびに頭頂側頭連合の関与が報告されている(Frith U, Frith CD:Development and neurophysiology of mentalizing. Philos Trans R Soc Lond B Biol Sci Vol.358 459-473 2003)。一方、共感の神経基盤として、mirror neuron system、および辺縁系の関与が示されてきた。Mirror neuronとは、他個体の目標志向的な動作の観察、ならびに自らの同様な動作の両方に反応する神経細胞のことで、サルの単一ニューロン計測により前頭葉F5領域に存在することが記載された(Rizzolatti G, Craighero L:The mirror-neuron system. Annu Rev Neurosci Vol.27 169-192 2004)。その後、人間の脳機能イメージング研究により、同様な振る舞いを示す領域が、頭頂葉と前頭前野に存在することが示された。他者の運動の知覚と、自己の運動を同一領域で符号化していると目され、mirror neuron systemと名づけられた。

 ヒトの向社会行動の発達においては、共感が必要であるが、必ずしも十分ではないとされている。社会交換理論によると、利他行動も、社会報酬を最大にするような行動として選択されるのであり、経済行動と同一の枠組みで説明できるとしている。実際、他者からのよい評判という社会報酬と金銭報酬は、ともに得られることによって報酬系として知られる線条体を賦活すること、さらに、他者からのよい評判は、寄付という利他行為の動機を増強し、その際線条体の活動が増加することが機能的MRI実験により明らかとなった。すなわち、19人の成人被験者に金銭報酬と社会報酬を与えた時の神経活動を機能的MRIで観察したところ、金銭報酬と自分へのよい評価は、報酬系として知られる線条体で、同じ活動パターンを示した。これは、他者からのよい評判は報酬としての価値を持ち、脳内において金銭報酬と同じように処理されているということを示している。一方、他人からの評判が、実際に行動決定に影響を及ぼすことを証明するために行った、寄付行為の決定を課題とする機能的MRI実験では、寄付行為の社会的報酬価を、他者の存在・不在によって変動させたところ、他人の目の存在によって寄付行為が増加し、行為選択判断の際に起こる線条体の活動と相関した。この結果は、さまざまな異なる種類の報酬を比較し、意思決定をする際に必要である『脳内の共通の通貨』の存在を強く示唆する。他方、社会的報酬に特有な活動として、内側前頭前野の活動がみられたことから、他者からみた自分の評価は、内側前頭前野により表象され、さらに線条体により社会報酬として『価値』づけられることが想定された。すなわち、社会的報酬には、線条体を含む報酬系と、心の理論の神経基盤の相互作用が関与していることが明らかとなった(Izuma K, Saito DN, Sadato N:Processing of social and monetary rewards in the human striatum. Neuron Vol.58 284-294 2008)。

 以上の知見から、共感にはmirror neuron systemの関与が、社会的報酬においては報酬系の関与が、そして両者に共通して心の理論の関与が想定される。いずれの系も、その神経基盤に関する脳科学的な知見が急速に蓄積しつつある。機能的MRIをはじめとする、人間の脳機能イメージング技術の急速な進展により、向社会行動の発達を、生物学的基盤に立ってモデル化し検証する機は熟してしる。」(定藤規弘:機能的MRIによる社会能力発達における神経基盤の解明. 脳外誌 Vol.23 318-324 2014)

【報道】「ネイマールの秘密、脳の負荷はアマの1割以下」体は脳だけで動かすものではない。

毎日新聞は、2014年7月24日「ネイマール選手:脳の活動も超人的 負荷はアマの1割以下」という研究成果を掲載している。

サッカーブラジル代表のFWネイマール選手(22)が足を動かす際、脳の活動範囲がアマチュア選手の1割以下であるとの研究結果を、独立行政法人・情報通信研究機構の研究チームが明らかにした。同機構脳情報通信融合研究センター(大阪府吹田市)の内藤栄一研究マネジャーは「脳の活動範囲が小さくて負荷が少ない分、別の複雑な動きも同時にできるため、多彩なフェイントにつながっているのではないか」と分析する。論文はスイスの神経科学専門誌「フロンティアーズ・イン・ヒューマン・ニューロサイエンス」に近く掲載される。

研究は今年2月、同機構がNHKと協力して行った。ネイマール選手がMRI(磁気共鳴画像化装置)の中に横たわり、指示に従って右足首を回すなどの動作をした時の大脳運動野の活動を調べた。

比較のためスペイン2部リーグのプロ選手3人、アマチュアのサッカー選手1人、水泳選手2人にも同じ実験に参加してもらった。その結果、ネイマール選手の脳の活動範囲はアマチュア選手の約7%、水泳選手の約9〜10%にとどまり、2部リーグ選手と比べても約11〜44%だった。

従来の研究で、プロのピアニストと素人が同じフレーズをピアノで弾いた場合、プロの方が脳の活動が少ないとの報告があるという。内藤氏は「脳の負荷が少ない分、残った脳細胞を使えるようになり、常人よりも多彩な動きができるのではないか。複数の関節を複雑に動かして急激に方向転換できるなど、効率の良い脳が高度なドリブルなどを可能にしているのだろう」と指摘した。http://mainichi.jp/sports/news/20140724k0000e050243000c.html

よく「体で覚えろ」という。また野球選手が『体が自然に反応したんです』とインタビューで答えている。体に習慣的に覚えこますと忘れないし、動きがスムーズで反応が早くなると考えられている。ネイマール選手のこの実験結果は、ネイマール選手が幼少のころから練習を重ねてきた結果、体が脳を動かさずに反射的に動くということを身に着けているため、誰よりも早く反応し多彩な動きができるのだろう。記憶は脳だけでなく、体も記憶するということである。昔、スリが昔の癖が出てスリをした時、「この手が悪いんだ」といったという話がある。体が昔のことを記憶していて似た状況に出会うとつい昔の癖が出るのである。私たちも体で覚えこんだことならば、さほど頭のエネルギーを使わなくとも簡単にできるのはこうしたことによる。誰もが経験していることだと思う。

2014年5月 7日 (水)

赤ちゃんにも善悪が分かる?⇒「YES」

赤ちゃんの道徳観を研究している米エール大学のポール・ブルーム教授(心理学)は、人間の脳には生まれつき道徳観念が組み込まれており、赤ちゃんや幼児でさえ、他人の行動の善悪を判断できる。そして、善行に報い、悪行を罰したいと自然に欲するものなのであると主張されている。突飛な主張だと思われるかもしれないが、多くの研究室で立証されているそうである。米国ⅭNNが伝えている(2014/5/6)http://www.cnn.co.jp/fringe/35045208.html

米エール大学の私の研究室では、人形を使った道徳劇を赤ちゃん相手に見せ、その反応を観察した。他人が坂を上るのを手助けするような善人役の人形と、逆に坂から突き落とすような悪人役の人形とを対照させて上演。赤ちゃんの表情や行動を見て取ることで、どのような道徳判断を下しているのか分析した。結果として判明したのは、生後3カ月の赤ちゃんですら、善人役の人形を好むということだ。
もう少し年長の赤ちゃんや、よちよち歩きを始めた幼児になると、善人役に報酬を与え、悪人役には罰を与えるようになる。さらに、自分と同じ道徳観念を持った人形に愛着を示すこともわかった。つまり、善行に報いる正義の味方の人形の方が好かれるのである。
このように普遍的な道徳感覚が存在することが立証されたのである。ただ、赤ちゃんの段階の脳というのは、自然淘汰(とうた)の産物であり、その先天的な道徳観には当然ながら限界がある。実際、数々の研究で判明しているように、赤ちゃんの道徳的判断というのは、最初、融通が利かない。世界を硬直的に「自分たち」と「彼ら」に二分してしまって、自分たちのグループにかたくなに肩入れする。
(このような研究結果を知ると、私たちの対応は変わるはずである。)一つには、親の側で赤ちゃんや子どもに対する見方が変ってくるはずだ。生まれたばかりの赤ちゃんは道徳性のかけらもない、ちっちゃなサイコパスだと思われている節がある。ある種の赤ちゃんが遺伝的に救いようのない悪玉だと考える人もいる。こうした冷笑的な見方は誤りであることがはっきりする。私たちは生まれながらにして道徳的なのであり、環境次第で、その先天的な道徳感覚が高まることも堕落することもありうる。さらに、人間の先天的な道徳心理を理解することで、より良い社会の創造につながるだろう。(CNN)

道徳、倫理観というものが先天的であるとすると、私たち人間は道徳性を元からもっている生物であり、道徳性のある社会を好む生物であることになる。人間の善悪について古来より論争が続いてきたが、この論争に終止符を打つことになりはしないだろうか。

2014年4月 6日 (日)

幸せホルモン「オキシトシン」の効果

脳内ホルモンというと、セロトニン、メラトニン、ドーパミン、エンドルフィンなどが有名であるが、最近、「オキシトシン」という言葉をよく聞くようになった。オキシトシンは別名「愛情ホルモン」「包容ホルモン」「幸せホルモン」といわれている。2014年4月5日のNHKスペシャルで「人体ミクロの大冒険第2回 あなたを変身させる!細胞が出す“魔法の薬”」としてオキシトシンが取り上げられていた。日本ではまだ認められていませんが、欧米ではオキシトシンの点鼻薬が売られていて、最近は日本でも輸入品がネットで売られている。

オキシトシン (Oxytocin, OXT, OT) は視床下部の室傍核と視索上核の神経分泌細胞で合成され、下垂体後葉から分泌されるホルモンであり、主に平滑筋の収縮に関与し、分娩時の子宮収縮させる。また乳腺の筋線維を収縮させて乳汁分泌を促すなどの働きを持つ。このため臨床では子宮収縮薬や陣痛促進剤をはじめとして、さまざまな医学的場面で使用されてきていた。(Wikipedia)

しかし最近になって、オキシトシンが母乳を出すように促すだけでなく、母性愛と関係することがわかってきた。さらに信頼や男女の愛情と関係して分泌されるということもわかってきた。母性愛という心の状態だけでなく、信頼という心の状態、男女の愛情という心の状態をつくり出すということで、急激にこのオキシトシンというホルモンの役割が注目されはじめたのです【有田秀穂(東邦大学医学部教授)】

オキシトシンは良好な対人関係が築かれているときに分泌され、闘争欲や遁走欲、恐怖心を減少させる。オキシトシンをヒトに投与する実験が行われたが、鼻からの吸引によるこの実験では金銭取引において相手への信頼が増すことが判明。盲目的に信頼したとえ損害を蒙ってもオキシトシンが再投与されれば再び相手を信頼し、不利な取引契約を締結してしまう(米国ニューロン誌「哲学に影響を及ぼす脳科学」Wikipediaより)。

「さみしさを一瞬で消せるオキシトシンを簡単に分泌させる三つの方法」(ロケットニュース24 2013/12/17)ロケットニュースは、オキシトシンの分泌を促す方法を三つ挙げている。オキシトシンが出ると幸福感を得られるだけでなく、ストレスからくるイライラも軽減されるという。http://rocketnews24.com/2013/12/17/396816/

○親切行動にオキシトシンがともなう

「人に親切にすると自分にも良いことがあるよ、天の神様が見ててくださるけぇ」と、おばあちゃんから教わった人も多いだろう。この昔ながらの言い伝えは、あながち嘘ではないことが解っている。人に親切にすると、脳内でオキシトシンがガンガン分泌されるのだ。

おばあちゃんの言っていた「良いこと」とは、実はオキシトシンなのである。お年寄りに席を譲るだけでなく、落し物を届けたり、少年が手放してしまった風船をキャッチしてあげるなどなど……。他人に親切な行動には、オキシトシンの分泌がともなうので、遠慮せずに人に親切にしよう。

○なるべく一人で食事をしない

一人で食事するよりも、気心の知れた仲の人と食事する方がオキシトシンが分泌されることもわかっている。このシーズン、あまりの飲み会の多さにストレスを抱える人も少なくないのだが、一人さみしく食事をするよりも、オキシトシン分泌においては、飲み会に参加した方良い。

○恋人と触れ合う、恋人のいない人は友人と抱き合う

オキシトシンを最大に分泌させる方法、それは恋人とのスキンシップである。恋人とのスキンシップで生まれる「安心感」や「幸福感」は、オキシトシンによるものといっても過言ではない。

桜美林大学の山口創准教授によると、スキンシップをすると、した人もされた人も脳内から「オキシトシン」というホルモンが分泌されるそうだ。このオキシトシンが分泌されることで愛情が育まれ、信頼する気持ちがお互いに強まるという。さらにオキシトシンには記憶力を活性化させる効果があり、学力向上に間接的に影響するといわれている。しかも、オキシトシンの効果は生涯脳内に残るとのだとか。

オキシトシンの投与実験も進んでいる。

2010年4月24日 金沢大学「子どものこころ発達研究センター」が知的障害のある自閉症患者にオキシトシンを投与したところ自閉症患者の症状が改善したと発表。主治医の棟居俊夫特任准教授は「知的障害のある患者で効果が確認された例は初めて」とコメントした。また自閉症のアスペルガー症候群でも効果が確認されたとの報告もある。これを知った同センターに通院する20代の男性が2008年にオキシトシンの点鼻薬を輸入・服用(数か月間)しところ、主治医の目を見て話す、対話中に笑顔を見せる、IQテストが受けられるようになるなどの症状の改善が見られ、その後10か月間の投与でも改善の持続が確認された。男性は3歳で自閉症の診断を受け、以前は他者と目を合わせることができず、オウム返しの反応しかできなかったとか。(Wikipediaより、NHKスペシャルでも金沢大学の研究は取り上げられていた。)金沢大学のセンターのウェブの中に「オキシトシンの広場」という使用例の報告がある。

http://kodomokokoro.w3.kanazawa-u.ac.jp/menu_01/05.html

最後に、有田秀穂(東邦大学医学部教授)があげられている脳内にセロトニンとオキシトシンを十分に分泌させる、誰でも簡単にできる方法をあげておきましょう。http://shuchi.php.co.jp/article/1092

1、夜は12時までに眠る。
2、夕食後はパソコンを操作しない。
3、夜は携帯電話で長話をしない。ベッドの近くに携帯電話を置かない。

 1~3については、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌をよくして、よい睡眠をとる条件です。

4、朝日を浴びる(朝型生活に)。
5、朝と夕方に30分程度歩く(あるいはジョギング、サイクリング、スイミングなどのリズム運動を30分程度)。
6、呼吸法をする(これもリズム運動の一種です)。
 一日の中で何回か5分程度、腹式呼吸をする(ヨガ、気功、坐禅などは呼吸法になります)。

 4~6はセロトニン神経を活性化します。

7、家族団らん。
8、夫婦、恋人とのふれあい。
9、感情を素直にあらわす。
10、親切を心がける。

 7~10はオキシトシン分泌を促し、セロトニン神経も活性化させます。

この7~10の行動から人間関係がうまくいき、気分よく生活することでオキシトシンが分泌されることがわかると思います。オキシトシンが十分に分泌されると、脳の疲れがとれるだけでなく、体をも健康にするのです。

2014年3月 6日 (木)

【報道コラム】「欧米にはなぜ、寝たきり老人がいないのか」より

読売新聞の医療サイトに、yomiDr.(2012/6/20)に、表題のびっくりするような記事が掲載されていた。たまたま知って開いてみた。医師の宮本顕二さんが疑問に思って探求したことを述べたコラムであった。終末期医療と人生の最期の迎え方を考えるうえで考えさせられる内容である。どちらがいいかは、簡単には判断を下せない。死はこの世の最期ではあるが、死後の世界があるという前提に立つと、どのように移行すればいいのか、難しい問題である。現在医学的には脳死をもって死としているが、それさえ確かなものではないのだから。

http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=60441

ヨーロッパの福祉大国であるデンマークやスウェーデンには、いわゆる寝たきり老人はいないと、どの福祉関係の本にも書かれています。他の国ではどうなのかと思い、学会の招請講演で来日したイギリス、アメリカ、オーストラリアの医師をつかまえて聞くと、「自分の国でも寝たきり老人はほとんどいない」とのことでした。一方、我が国のいわゆる老人病院には、一言も話せない、胃ろう(口を介さず、胃に栄養剤を直接入れるため、腹部に空けた穴)が作られた寝たきりの老人がたくさんいます。

不思議でした。日本の医療水準は決して低くありません。むしろ優れているといっても良いくらいです

 「なぜ、外国には寝たきり老人はいないのか?」

答えはスウェーデンで見つかりました。今から5年前になりますが、認知症を専門にしている家内に引き連れられて、認知症専門医のアニカ・タクマン先生にストックホルム近郊の病院や老人介護施設を見学させていただきました。予想通り、寝たきり老人は1人もいませんでした。胃ろうの患者もいませんでした。

その理由は、高齢あるいは、がんなどで終末期を迎えたら、口から食べられなくなるのは当たり前で、胃ろうや点滴などの人工栄養で延命を図ることは非倫理的であると、国民みんなが認識しているからでした。逆に、そんなことをするのは老人虐待という考え方さえあるそうです。

ですから日本のように、高齢で口から食べられなくなったからといって胃ろうは作りませんし、点滴もしません。肺炎を起こしても抗生剤の注射もしません。内服投与のみです。したがって両手を拘束する必要もありません。つまり、多くの患者さんは、寝たきりになる前に亡くなっていました。寝たきり老人がいないのは当然でした。

さて、欧米が良いのか、日本が良いのかは、わかりません。しかし、全くものも言えず、関節も固まって寝返りすら打てない、そして、胃ろうを外さないように両手を拘束されている高齢の認知症患者を目の前にすると、人間の尊厳について考えざるを得ません。

家内と私は「将来、原因がなんであれ、終末期になり、口から食べられなくなったとき、胃ろうを含む人工栄養などの延命処置は一切希望しない」を書面にして、かつ、子供達にも、その旨しっかり伝えています。(宮本顕二)

なお、倒れて口から食べられなくなり、やむをえず胃ろうを行っていたが、その後症状が安定して口から食物をとることができるようになり、胃ろうをはずすことができたケースも聞いています。寝たきり状態から車いすで散歩程度はできるようになったということです。救急処置として胃ろうは役割を果たして、回復に至るケースも考えられるようです。